第663話 囚われしフェンリル
イギリスの地下のこの場所には数百を越える魔法の鎖に縛られた魔獣が居た。
その名はフェンリル。
管理する神No.8のチーム[パンドラ]のリーダーであるパラス・スケールによって造られた魔獣の一体である。
フェンリルには一切魔力による攻撃を受けず、その攻撃はゴッドキラーと言われ、神属性に致命的なダメージを与える事が出来るとされる魔獣だが、二年前にアーサーによって、囚われていた。
「……アレクサンダー様」
フェンリルの囚われている扉の目の前、つまり最終防衛ラインとも言えるその場所でチーム[ソード]のリーダーアレクサンダー・ペンドラゴンは前方を見据えていた。部下の声が聞き取れぬ程、集中していた。
「アレクサンダー様!」
「どうかしたか?」
「はい。入り口は固定魔法を扱うエマ・レイン様と日本の上川恋歌様で固めています。ここまで繋がる廊下は我々チーム[ソード]のメンバー達と佐倉湊斗様でしっかりと守りを固めております」
「そうか。チーム[ソード]の副リーダーとしてこの廊下の守りは任せるよ。ルーカス」
「リーダーこそ頼みます。お互いに生きて帰りましょう」
「……勿論さ」
アレクサンダーは一人になると、扉を開ける。
「……来やがったな。若輩者のエクスカリバー使い」
魔法の鎖のよって、体の殆んどが動かせる事は出来ないものの、フェンリルは喰らいつく様にアレクサンダーに迫る。
「その言い方は止めて貰うよ。フェンリル」
「黙れ!我をさっさと外へ解き放て」
「……フェンリルお前を喰らい為にここまで向かっている者が居るよ」
「この我を喰らう?ほざけ」
「ベルセルク・フルベルクがフェンリルの能力を得たいらしい。能力喰いによって奪うつもりらしい」
「ほう」
「フェンリルを喰われれば、魔法が効かず、神キラーまで手に入れられると、こちらとしてもそれだけは避けたい」
「……我にそれを告げて、どうする?」
「次にここに来たものを倒してくれないか?」
「……取り引きだ。魔法の鎖の外せ」
「……数本だけだ」
「良いだろう」
アレクサンダーはフェンリルの体に巻き付いた魔法の鎖を数本取り除くと、その部屋を後にし、その部屋の前で立ち尽くしていた。
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アレクサンダーがフェンリルと口約束をしていたその頃、表には動きがあった。
「……チーム[ヴァルハラ]はチーム[パンドラ]の後楯がある様ね」
エマはチーム[ヴァルハラ]と共に十鬼シリーズの一体である拳魔のその姿を見てそう断然した。




