第661話 ミスターX
「ガラハッド。お前が休暇貰っても、腕試しで挑んでくる奴等が、お前の休暇を考慮してくれるとは思えねぇよ」
モルドレッドは休暇を申し出たガラハッドを貶すようなその発言はガラハッドの怒りを十分に買った。
「モルドレッド。発言には気をつけて貰おう」
「……事実だろ?」
「……魔水晶越しで、強気なのか、それとも本気で怒らせたいのか……モルドレッド覚悟は出来ているんだろうね?」
モルドレッドとガラハッドのその話を避け切る様に、魔水晶に新たに写った仮面の男は割って入る。
「お二人さん。そこまでにしたら、どうだ?」
ガラハッドは魔水晶に写った人物が仮面の男だと、理解すると、ため息を溢す。
「ミスターX。チーム[ダイヤ]のリーダーである君は世界中周りギャンブルに勤しんでいると聞いた。チーム[ダイヤ]は空中分解を始めている。君がリーダーとしての役割を果たしていないのが、その原因だ」
「ガラハッド。俺は女王陛下に許可を頂いて、放浪の旅の赦しを貰ったんだぜ。それに文句をつけるってことは女王陛下への反逆か?」
「……いや……もう良い」
「ガラハッド。そう言うな今イギリスの近くに居てな。人手不足なら、戻ろうと思ってんだ」
ミスターXとは、国籍、年齢、性別等の全てが曖昧な人物である。
実績は、偽王聖剣を抜いた事があり、イギリスでは抜いた三人の一人である。ミスターXと言えば、その実績しか無い。戦闘も目立った功績も無く、女王陛下の許しもあり、世界中を放浪している人物である。
そんなミスターXが魔法なのか、能力なのか、異能なのか区別することが難しい特殊な戦闘方法で戦うのだが、その一撃一撃の全てが、大幅に変化する一貫性の無い攻撃でその攻撃方法は未だに誰にも解明出来ていない。
チーム[ダイヤ]のリーダーとしては、リーダーらしい事は一切しないものの、メンバー達の信頼はあり、ミスターXの不在の中、メンバー達はミスターXの帰りを待ち、ミスターX以外の事柄では全く動かない。
「……そうですか」
ガラハッドはミスターXがイギリスに戻ると言うその発言に少し、戸惑っていた。何故なら、ガラハッドはミスターXの事を避け続けていたのだから。
「もっと嬉しそうにしろよ」
「……ええ、それよりもそろそろ時間では?」
ガラハッドはミスターXから逃れる様にして、アーサーへと語りかける。
事実、会議の時間は迫っていた。
「……来ていない幹部はまだ居る。少なくとも、イギリスの上空を守るチーム[キング]、海を守るチーム[クイーン]は待ちたい」




