第659話 アレクサンダー・ペンドラゴン
マーリンの登場は良くも悪くもアーサーとランスロットの険悪なムードを押さえるのには、効果的だった。
「……ランスロット。少しは落ち着いたかしら?」
「はい。……お見苦しい所を見られましたね」
「子供の頃から見ている私としてはもう見飽きたわ」
「……」
「そう。緊張する事は無いでしょ?」
「してませんよ」
「そう。それは良かったわ。ランスロット、アーサーもイギリスを思う気持ちは貴方と変わらないわ。そんなアーサーが他国の者に任せても良いと思える何かがあったんじゃないかな?」
マーリンの目線はアーサーへと向けられ、アーサーは悟る。偽王聖剣を抜いた事によって、女王陛下の約束を守る事となったその経緯を知っているのではないか、その考えがアーサーの頭を支配していた。
「……マーリン確かに僕の考えを変えさせる出来事はあった」
「じゃあ、教えて貰おうかしら?彼も来た事だしね」
「彼?」
アーサーは魔水晶に新たに写った者が居ない事から、扉から誰かがやってくる事なのだと把握する。
すると、ノックする音が部屋に響くと、扉が開かれる。
「遅れて、申し訳ありません」
「アレク。集合時間は過ぎてないよ」
「アーサー様」
金髪のその男は空いている席へと腰掛け、魔水晶に写った人達が複数居ることを把握する。
「マーリン様、ランスロット様、モルドレッド様。久しぶりでございます」
魔水晶に写った者達への挨拶が終えると、マーリンは話を戻す。
「アーサーそれで、他国の者に任せようと思えたその理由は?」
「その中の一人が偽王聖剣を抜いたと言うのが、主な理由です」
アーサーのその言葉を受け、勢い良く席を立つものが居た。
何故、アーサーのその言葉を聞いて、彼が動揺したのかそれは彼がエクスカリバーがどれだけのものなのかしっかりと理解している人物だからである。
アレクサンダー・ペンドラゴンはチーム[円卓の騎士団]のメンバーであり、その傘下のチーム[ソード]のリーダーも勤めている人物である。
彼は魔力量が異常であり、白魔術:耐魔術に加え、白呪術:吸魔術を会得しており、更に聖神化することも出来る男である。しかし、彼はそれに留まらず、マーリンの儀式によって、体内に光の聖剣を所有しており、人工神器を宿した、人工能力者である。そして、腰には偽王聖剣を携えている。
アレクサンダーにとって、エクスカリバーとアーサーは絶対的な存在であり、岩に刺さった偽王聖剣を抜いたのイギリス国内でアレクサンダー、アーサー、ミスターXの三人だけであり、それが彼にとって誇りだった。




