第656話 偽王聖剣(エクスカリバー・レプリカ)
運命極論でエクスカリバーに一太刀入れると、恋歌は運命極論を消す。
両手空いた恋歌はエクスカリバーを握ると、一気に引き抜く。
「……どうやら、無理の様ですね。エクスカリバーは最強の聖剣と呼ばれるのは、なんの影響も受けないからですよ」
「……道理であっさり、許可したのね」
「では、次の方……木山廉。君だ(女王陛下に言われた通り、最後にしたが、なんの意味が?)」
最後まで残った廉はエクスカリバーの目の前に立つ。
廉は片手でエクスカリバーを握ると、簡単に引く抜いて見せる。
「あれ?何か、簡単に抜けたんだけど」
「……馬鹿な。オリジナルのエクスカリバーでは無いが、偽王聖剣を抜くなんて」
「……えっと、このエクスカリバーはどうすれば?」
「……元に戻して貰えると」
「分かりました」
廉はアーサーの指示通り、エクスカリバーを岩へと再び刺す。
(この男エクスカリバーの価値を知らないのか?それとも、一度抜けた事から、再び抜抜くつもりなのか?どちらにしても、エクスカリバーが彼を認めた……全ては女王陛下の思い通りになってしまったか)
アーサーは一度諦める様にため息を溢すと、廉に近づく。
「……木山廉。イギリスでも現在エクスカリバーを自在に抜く事が出来るのは三人だけだと言うのに、君は簡単に抜いてしまうとは驚いたよ」
アーサーは廉の手に差し出す。
廉はそれに答えた。
「世界最強の剣士にそう言って貰えると、同じ剣士として嬉しいな」
「……君は剣士だったのかい?」
「そうです」
「……そうか……とにかく、約束は守るよ。フェンリルの護衛と幻魔討伐には協力してもらうよ」
「はい。こちらこそ、宜しくお願いします」
握手を終えたアーサーはスカーレットの前まで移動を終えると、一枚の紙を手渡す。
「……皆様の泊まる部屋を用意しました。今夜はここでお休み下さい。作戦会議は、明日の昼に行いますので、それまでは自由行動で構いません。ただし、あまり目立つ行為があった場合、警備のものが動く可能性もあるので、悪しからず」
「……分かったわ」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
アーサーが用意した高級ホテルにやって来たスカーレット達はチェックインを済ませる。スカーレットから昼まで自由行動を言い渡され、皆自身の部屋へと移動するその最中、廉はスカーレットに呼び止められていた。
「木山廉。感謝するわ」
「突然何ですか?」
「あの時貴方がエクスカリバーを抜かなければ、なにもせずに返されていたわ。今になって、橘強絶が貴方をどうしても連れていけってと言った理由が分かったわ」
「……は、はい」
「それじゃあ、明日の昼にあのエクスカリバーが置いてあった場所に集合だからね」
「分かりました」




