第654話 王の素質
王室に残されたエリザベスとアーサーは皆が出ていったのを確認すると、会話を再開させる。
「……フェンリルの護衛と幻魔の討伐はやろうとすれば、簡単に出来ますよ」
「何が言いたいのかしら?」
「この手柄はイギリスだけのものです。わざわざ、アメリカや日本にも手柄を渡すつもりですか?」
「……その通りです。幻魔の最後に倒すのは、木山廉です」
「分かりません。何故あの様な男に?」
「確かに彼は実力はなく、荒削りな所もあります。しかし、彼はアーサー……貴方に近しいものを感じました」
「……ご冗談を」
「私は本気です。……アーサー一人賭けをいたしましょう。その賭けに私が勝てば、この件に関しては、口出しは一切認めず、私の言う事を聞いて貰います」
「……その賭けの内容は僕が決めても宜しいでしょうか?」
「分かりました。貴方の戦闘以外なら」
「それで構いません。アメリカと日本の全員にはあの剣を抜いて貰います」
「……アーサー」
「分かっています。全員引き抜ける筈も無いことは、しかし僕にはイギリスの代表としてあのものたちを簡単に認める事は出来ないのです」
「……仮に引き抜けたのなら?」
「その時は約束を守りましょう」
「……それでは、失礼します」
「アーサー。木山廉は最後でお願いするわ」
「……何か理由があるのですか?」
「はい」
「……分かりました」
アーサーは王室を後にすると、王室の扉の前に立っていたスカーレットと対峙する。
「……皆さんには、一度やって貰わなければならない事があります」
「なんでしょう?」
「地面に突き刺さったエクスカリバーを抜いて貰います」
「……エクスカリバーは誰もが簡単に抜ける剣では無いわ。イギリスでも簡単に抜く事が出来るのは三人しか居ない筈」
「その通りです。もしも抜く事が出来なければ、皆様の協力をお断りするつもりです」
「しかし」
「貴女方に選べる選択は抜くか、抜かぬかのどちらかだけです」
「……抜きましょう」
「では、直ぐにでも」
アーサーは夜の町へとスカーレット達を連れ出す。
アーサーはとある岩の目の前で立ち止まる。その岩は町中に置いてあり、その中心にはエクスカリバーが突き刺さっていた。聖剣の中でもトップクラスとまで言われたエクスカリバーを大胆にも街中に置いてあった。
これ程の聖剣ならば、盗まれるのは目に見えていることだろうが、それがエクスカリバーだからこそ、それが許されている。
エクスカリバーは所有者を選ぶ。王の素質のあるものだけを




