第653話 王室
「よくぞ。参られましたね。私はエリザベスでございます」
椅子に腰かけるその女性は自身の名を告げた瞬間、突然として金髪の男はその場に現れる。
「女王陛下」
「何事ですか?アーサー」
「護衛もつけずに会うなど、止めて頂きたい」
チーム[円卓の騎士団]のリーダーにして、世界最強の剣士とまで呼ばれているアーサー・グラフェリオンは腰に伝説の聖剣を携え、自身の異能は聖神の聖剣である。
そんなアーサーは光の如く、移動するとまで言われ、その実力は管理する神No.3のチーム[オリュンポス]のリーダーが単身でイギリスを襲ってきた際、アーサー一人で追い返した事があるなどその活躍は数えるのが、馬鹿馬鹿しくなる程の数である。
そんな彼はイギリスの象徴にして、イギリス国民からは英雄として知られている人物である。
そんな男の登場にアメリカのトップに君臨する大将の一人でもあるスカーレットや中将のエマは勿論、日本から来た佐倉湊斗、上川恋歌も気を引き締めていた。しかし、木山廉、加藤彩美の二人だけは違ったアーサーのその姿を見ても、アーサーと言う男の凄みを理解していないからこそ、突然現れた男に対して、誰なのかと言う疑問が頭を過っていた。
「アーサー。幻魔討伐を共にするのですから」
「しかし、今のイギリスはフェンリルの護衛もあるんですから」
「……だからです。フェンリルをチーム[ヴァルハラ]から守るのと、いつ出現するか分からない幻魔の対処は援軍に来られた者達にも協力が必要です」
エリザベス女王のその言葉にスカーレットは疑問をぶつける。
「……私ごとですが、宜しいでしょうか?」
「……はい。構いませんよ」
「イギリスの程の戦力が有れば、幻魔の討伐、そして今聞いたフェンリルを守る事など造作も無い筈では?」
「その通りでしょ。本来なら」
「……では、現在は?」
「現在チーム[円卓の騎士団]の傘下チームは各地に散らばっており、ここに戻る事は出来ません。現在投入出来るのは、ここに居るアーサーとチーム[キング]、[ソード]、[シールド]のみとなっています」
「何故こんなに手薄なのですか?」
「その情報は提示出来ません。納得が出来ないのであれば、帰って貰っても構いませんわ」
「……いいえ。ここまで来て引く事は出来ませんので」
「では、そのお言葉に?甘えましょう。皆さんには悪いですが、暫く、部屋の外へと退席して頂きたいのですが」
「分かりました」
スカーレットは反論する事なく、皆を引き連れ王室を後にする。




