第650話 アメリカの提案
元東京本部の応接室で五人の人間がそこには居た。
スカーレット・クイーン、エマ・レイン、加藤彩美、木山廉、橘強絶の五人はとある話題について語りあっていた。
「……その話は信用出来るのか?」
強絶はアメリカ側から聞いたその話を信用出来ずに、再確認を取る。
「ええ、幻覚に関しては、幻魔は世界一だからね。アメリカでも、私が所属する部隊の全員と、彼女の家族は幻魔の強力な幻覚によって、別の記憶に塗り替えられていたわ」
「だったら、貴女の記憶も幻覚によって、忘却していたのでは?」
強絶のその言葉にスカーレットとは無言を貫き、魔法陣から取り出した一枚の写真を全員が見える様に机の上に置く。
その写真には幼いスカーレットと、その隣には黒髪の女性が写っていた。
その写真に写った黒髪の女性を見た彩美はその写真を手に取り、近くで確認する。そして、確信する。
「ドレア・ドレス」
彩美のその答えにたどり着いた事によって、アメリカの二人を除いた、廉と強絶は戸惑う。
「そう。そこに写るのは、アメリカの特殊部隊の訓練生だった頃の私とドレアよ。と、言っても、ドレアは別の名だったけどね。今の私には思い出す事は出来ないけどね」
「別の名?」
「ええ、幻魔の幻覚にかかっている以上、思い出せないけど……妹の貴女も何も覚えていないでしょ?」
そのスカーレットの言葉を受け、彩美よりも先に廉が口を開く。
「妹?ドレア・ドレスって管理する神の傘下のチーム[カオス]のリーダーだろ?」
「……ええ、ドレア・ドレスも強力な幻覚を使うけど、幻魔には勝てない様でね。彼女自身も幻魔による幻覚にかかっているみたいでね。管理する神に入ったのも幻魔が関係していると思われるわ」
「幻魔って十鬼シリーズの一体で合ってますか?」
「ええ、管理する神No.8チーム[パンドラ]のリーダー、パラス・スケールが造った十鬼シリーズで合っているわよ」
廉はその確認を終えると、暫く考え込む。
そんな中、強絶は話を続ける。
「貴女方の提案はこちらも受け入れましょう」
「随分とあっさりね」
「ここに居る加藤彩美は幻魔討伐に加えて貰って良いですよ」
強絶のその発言に彩美は激しく反論する。
「ふざけるな。そんな事を勝手に決めるな」
「……君には知る権利がある。それはここでは出来ない事だ。それとも、君はこのままで良いのか?北海道支部を襲ったのもドレア・ドレス。加藤家の人間を君以外を殺したのもチーム[カオス]、[ハンド]のメンバー達であり、そんなドレア・ドレスは君の姉だ。それが事実なのか、偽りなのか知ることが出来るにはここでは出来ない事だ。知りたいのであれば、アメリカについていくことだ」




