第65話 任務前で
「玲愛ちゃん」
私の膝の上で眠っていた浴衣ちゃんはゆっくりと起き上がる。
「ねぇ、浴衣ちゃん。私これから大阪に行って、任務をするんだけど……もし良かったら浴衣ちゃんも行かない?」
「うん。良いよ。私も行く」
「お願いね」
「後、誰を連れていくの?」
「えっと……誰が良いかな?」
「う~ん。八重ちゃんは強いよ」
八重ちゃん?
確か。紹介してくれた人だよね。
「じゃあ、八重さんに頼んでみるよ」
「私も一緒に行くよ」
どうやら浴衣ちゃんも手伝ってくれる様だ。
こんなに小さいのに頼りになるな。
「じゃあ、八重ちゃんの部屋に行こう」
「うん」
浴衣ちゃんに私はついていく。
浴衣ちゃんは扉をノックする。
「は~い。浴衣か?何?」
「あのね。今から任務に行くの。八重の力を貸して」
浴衣ちゃんだけに言われるのは悪いな。
私も……
「私からもお願いします」
「……分かりました。準備だけさせて」
「はい。広間で待ってます」
私と浴衣ちゃんは椅子に座り、八重さんが来るのを待っていた。
そう言えば大阪に行った事は無いな。そう言えばあの町はどうなったんだろう?
全壊はしているんだけどその後は分からない。
怒りに任せて暴れたけど、記憶が曖昧だ。
私はいち早く覚醒の力をものにしたい。
そして私達の居場所を守る力を……
「八重ちゃん遅いね」
「うん」
「八重ちゃんはおしゃれさんだから」
「確かに髪飾りとか素敵だよね」
八重さんの部屋の扉が開く。
「お待たせ」
「八重ちゃん。遅い」
浴衣ちゃんは頬を膨らませ八重さんに近づく。
「すみません。遅れました」
「全然大丈夫です」
黒川八重さんあったばかりだけと妙に大人びている。
スタイルも良くて、紫色の長い髪に素敵な髪飾り……憧れるな。
八重さんに見とれていると八重さんは笑顔で話しかけてくれた。
「それで、どんな任務?」
「えっと、大阪に行って欲しいって」
「大阪って?」
どうしたんだろう?
急に顔色が変わった。
「えっ、大阪に行くの?」
浴衣ちゃんは大声で叫んだ。
大阪に何かあるの?
「二人ともどうかした?」
八重さんは答えにくそうにうつ向く。
すると、浴衣ちゃん手招きをしていたので、私は側に行く。
「どうしたの?」
「耳貸して」
私は浴衣ちゃんに言われしゃがむ。
「あのね。一週間前に八重と他の人間で大阪に行く任務があったの。その時の任務は失敗で八重以外の人間は死んじゃったの」
「えっ」
私は八重さんに目を向ける。
八重さんは今回は行かない方が良いかも
「あの……八重さん。すみません、知らずに私……」
「良いのよ。行きましょう。負けたままじゃあいられないのよ」
……本当に大丈夫だろうか?
浴衣ちゃんは一年も居るみたいだし……
この任務、成功させてみせる。




