第64話 守りたいもの
「浴衣ちゃん。私は分かるよ。浴衣ちゃんの気持ち」
「……玲愛ちゃんが思っているよりもね。私」
「分かるよ」
他の人ならともかく、私は分かるよ。
とっても苦しいよね。
「分からないよ。誰も私の心の闇は」
いつも明るく皆と接し、自分の闇を押し殺している。
お母さんと同じ。
ずっと気づいていた。
お母さんは私の前では無理に明るく接してくれた。
浴衣ちゃんは私のお母さんに似ている。
この世界は他の人間と少し違うだけで、差別される。
お母さんやこんな小さな浴衣ちゃんが差別される理由が分からない。
「浴衣ちゃん。私のお母さんは殺された。お父さんに」
「えっ?」
浴衣ちゃんは驚いた表情した。
浴衣ちゃんはどう見ても子どもだ。こんな話するのは駄目な気がする。
でも、止まらない。もしかしたら、誰かに聞いて欲しかったのかな?それとも、浴衣ちゃんがどこか……お母さんに似ているから?
「私のお母さん。悪魔属性の能力ってだけでね。町の人達がお母さんの見る目が違うって分かっていた。私も学校で避けられているって分かっていた。でも、幸せだった。お母さんが私に見せてくれたあの笑顔は悪魔なんかじゃあ無かった」
「玲愛ちゃん」
浴衣ちゃんは私の手を握ってくれた。
「分かってくれるの?玲愛ちゃん」
「うん。苦しいよね。辛かったよね」
私達はいつのまにか体を抱き寄せ、涙を流していた。
浴衣ちゃんは泣き疲れたのか私の膝の上で眠ってしまった。
まるで妹が出来た様だ。浴衣ちゃん貴女は守って見せる。お母さんの分まで。
クスクスと笑い声がする。
「まるで子どもね」
「ドレアさん。おはようございます」
「えぇ、おはよう」
ドレアさんは私の隣に座る。
「今日の任務は三人で行って貰うわ。そうね。貴女にリーダーをやって貰うわ。一人じゃあ厳しいからメンバーは貴女が選びなさい」
「分かりました。一つ聞いても良いですか?」
「えぇ、良いわよ」
「ここに居るメンバーで[カオス]なんですよね」
「そうよ」
「目的は何ですか?」
これは聞いておかなければいけない。
浴衣ちゃんに人を殺させている理由は何なんだろう?
「何処から説明すれば良いのかしら。そうね。先ずは管理する神から説明するわね。簡単に言えば管理する神の目的は神能力者、神異能力者を集める事を目標としているわ。そしてチーム[ゼロ]や他のチームはその手足として動くわ。私達[カオス]はそれとは別に動きたい」
「別に?」
「そうよ」
ドレアさんは浴衣ちゃんの頭を撫でながら話してくれた。
「私達[カオス]の目的は……一つ。私達の居場所を守る」
「居場所?」
「ここに居るメンバーはここ以外の居場所が無いのよ。ここを失ったら……皆いく宛も無いわ。そうなったらここに居るメンバーはどうなるのかしら?」
「……それは」
どうなるんだろう?
私は……ここがなければ……どうなっていたんだろう?
私は浴衣ちゃんを見つめる。
……守りたい。浴衣ちゃんもこのチーム[カオス]の皆も、私が出来る事を
「貴女には期待しているわ」
「……頑張ります」
ドレアさんは私に微笑むとエレベーターに向かい歩いていく。
浴衣ちゃんはこの居場所を守る為人を殺したのかな?
私もここならやっていけそう。
……この居場所を脅かすものは私がこの手で排除する。