第638話 偶然の出会い
大型デパートにやって来た三人はそれぞれ行きたい場所を三人で回っていた。廉は本屋、紫音は雑貨にそして、舞は洋服店その洋服店に行かなければ、この事件は起きる事は無かった。
「……廉、これ似合う?」
舞が手に取った洋服を当て、廉に見せる様にして尋ねる。
「うん。似合ってる、似合ってる」
よく見ていないにも関わらず、廉は興味のない事だった事もあって廉の頭にはいち早く、この洋服店から出る事で埋め尽くされていた。
「似合ってるんだから、さっさとそれ買ったら?」
「……興味ある?」
「ないよ。あるわけねぇだろ」
「だったら、店の外で待ってて」
「良いのか。じゃあ、待ってるわ」
退屈そうにしていた廉が舞のその言葉を聞いて、満面の笑みで店の外に出ていった廉を見て、舞は手にしていた洋服を元に戻す。
「楽しんでいたのは、私だけだったのかな?」
舞は服を買うのを止め、店から出ようと動き始めようと、したその瞬間一人の女性と対面する。
「ごめんなさい」
舞の口からはとっさに謝罪の言葉が出ていた。
「こちらこそ」
女性を避け、店から出ようとした舞だったが、その女性がとある人物と重なる。金髪に碧眼、モデルのようなプロポーションに加え、自信に満ち溢れた笑みにこの整った容姿の女性を舞は誰なのか知っていた。
「嘘。有栖川天舞音?」
「……だから、何?」
「えっと、すみません」
天舞音が不機嫌そうに歩き始めようとしたその瞬間、天舞音の足は止まる。
「……まさか。川上玲奈の関係者?」
容姿が酷似している為、天舞音は確認を取る。
「えっ?お母さんを知っているんですか?」
「お母さん?では、貴女は娘?」
「はい。川上舞です」
「そう」
天舞音はポケットから小さな手鏡を取り出す。
「時間ある?」
「えっ?」
「何度を言わせないで、時間はあるの?」
天舞音からの突然のその言葉に戸惑ったものの、舞はさっき廉とのやり取りを思い出す。舞はそれを考慮して答えを出す。
「あります」
「……じゃあ、いきましょう」
「どこに?」
天舞音は手鏡を舞に向ける。
「……私の国に」
鏡に写った舞の姿は一瞬にして、消える。
それに続く様に天舞音は手鏡に自身の姿を写し、姿を消す。
「……何ここ?」
辺り一面鏡張りの建物の施設があり、上を見上げれば、全てが鏡で造られた国である。
「最初に言った筈よ。ここは私の国」
「ここに連れて来たのは何故ですか?」
「……貴女の母親に会いに来たんだけど、面会出来なかったのよ。だから、貴女で良いわ」




