第637話 修行相手
強絶は氷と紫音を見つめる。
「残りの二人に関しては、上原氷雪、上原凍結の二人に任せてある。修行は明日から行う事となる。今日は解散だ。これから一週間、遊べる暇は無いと思え」
その言葉を言い残した強絶はその場から徒歩で出ていった。
「……明日から修行か。なぁ、今から遊びに行かね?」
廉のその言葉に舞と紫音は笑顔で答えた。
しかし、氷は違った。
「何故、そんな発想になる。本部を決める大事なこの時期にそんな府抜けた事に言えるとは、どんな思考回路してんだ?てめぇ」
「……なんだ?一緒に行きたいのか?」
「ちっ!話にならん」
氷は廉との会話を止め、足早にその場から離れる。
そんな氷に追う様にして、湊斗をその場から離れる。
「三人で行くか」
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三人は一度帰って、駅前に集合することになっている。
「早いな、舞。いつから居た?」
「今来た所だよ」
「何その嘘臭い台詞」
「……わざわざ、気を使って言ってるんだから、察してよ」
「そんな面倒な事しなくても良いだろう?」
二人が揃い、駅前で紫音を待っていると廉はとある事に気がつく。
「何か、このアイドルよく見かけるな」
廉は至る所に映り、ポスターに映る一人の女性に気がつく。
「知らないの?」
「顔は知ってるけど、名前は知らん」
「有栖川天舞音だよ。世界中で活躍するアイドルだよ」
「……そうなんだ。ってゆうか、紫音遅いな」
「そんなに興味ないの?日本一の美女って言われる有栖川天舞音だよ」
「なんだ、お前は興味あるの?」
「あるよ。憧れるし」
「憧れ?」
「うん。私も女だからね」
「……そうか。俺は男だから、わかんねぇや」
「でも、男の廉から見ても綺麗でしょ?」
「……綺麗だな。でも、俺はそれ以上綺麗な剣術を見ているからな」
「顔の綺麗よりも剣術なの?」
「……女の価値は顔じゃあねぇだろ?顔だけが綺麗な女なんて、この世に溢れてるだろ?そんな数が多いものよりも、俺は数少ないものを手に入れたいね」
「それって、どうゆうこと?」
「だから、俺は剣術が上手い奴が好きなんだ……分からないか?」
「……それって……お母さん?」
見当違いなその舞の言葉に思わず、廉は肩を落とす。
そんな事があったとも知らずに、紫音は到着する。
「お待たせ、待った?」
紫音のその言葉に廉はこう言い返した。
「俺達も今来た所」
廉のその言葉を聞いた舞は満面の笑みで廉に近づく。
「何、その嘘臭い台詞?」
「……黙ってろ!」
揃った三人は目的地であるデパートへ向け、歩き始める。




