第632話 上川恋歌(かみかわれんか)
元東京本部防衛局情報部最高責任者は女性であり、まだ19歳の若さである。
その女性の元に一通の手紙が届いていた。
「……私も日本五大剣客に選ばれる日が来るなんて、思わなかったわ。でも、これは通過点としては喜ぶべきね。川上玲奈の後を継ぐものとして」
日本五大剣客の一人に選ばれたその女性は手紙を机の上に置くと、新たな日本五大剣客に召集場所である日本五大剣客の詰所へと向かい歩き始める。
その女性は玄関へと向かわず、壁の前に立ち尽くす。
壁を目の前にした女性は能力を発動させる。すると、日本刀の様な剣が出現すると、女性は壁に目掛け、剣を振るう。すると、壁はまるで最初からそこにはなかったかの様に壁は消える。
「流石、運命極論と呼ばれる剣ですね」
「……それが私の能力だからね。しばらく、留守にするわ」
「はい。かしこまりました恋歌様」
恋歌は外に出ると、再び運命極論を振るう。すると、壁は元に戻っていく。
「……召集まで時間があるわね。川上玲奈が入院している病院へ向かおうかしら」
恋歌は玲奈が入院している病院へと向かい歩き始める。
「……川上玲奈に会いたいんだけど」
「これは、上川恋歌様。ご用件を伺わないと」
「最初に言った筈よ。会いにきたと」
「しかし」
「日本五大剣客の召集にも遅れるかも知れないのよ。ここは直ぐ様、道を開けさせて貰うわ」
恋歌は能力を発動させ、運命極論を手にする。
「……これは、一体?」
恋歌は運命極論を振るい、剣圧を男性の警備員に向けて放つ。
「……行っても、良いかしら?」
「はい。どうぞ」
運命極論は現在の状況を変換させる神器である。
決まった出来事、人の考えや、今ある現状を別のものへと書き換える事が出来る神器である。しかし、運命極論は剣で切りつける、剣圧で触れさせる事で発動する神器であり、空気に触れているだけでも発動する事が出来る。
警備員の考えは運命極論によって、恋歌の望む考えと改変させられていた。
恋歌は玲奈が眠る病室に訪れる。
「……あれほど、憧れた女性がこんな姿になると、少し寂しいものがあるわね」
恋歌は運命極論をゆっくりと玲奈の体へと突き刺していく。
玲奈の体につき刺さった運命極論の能力によって、玲奈の今のこの状況を変える事も可能な筈である。
「……やはり、神器を取り戻さないと、無理か」
運命極論による事実改変が出来ない事で恋歌は自身の力だけでは植物状態となった玲奈を元に戻す事が出来ない事を悟ると足早にその場から離れていく。




