第631話 歪められた空間
「何をしている。殺せ!」
クラスメイト達は休む事なく、東雲への攻撃を続けていた。
しかし、東雲の周りの空間は歪められている為、東雲に攻撃が届く事なく、あらぬ方向へと攻撃はねじ曲げられていた。
「……悪いけど、急がせて貰うよ」
東雲は自身の周りに無数の魔法陣を出現させていた。
東雲はその出現させた魔法陣をクラスメイト達に向け、放つ。
「何だ。これ?」
東雲が放った魔法陣がクラスメイト達の手に入り込んでいく。
肩まで魔法陣が入ったクラスメイト達の腕は東雲の所有している空間内へと移動していた。
「……悪いね」
クラスメイト達の目の前に立った東雲がそう告げた瞬間、出現させていた魔法陣を消す。
それによって、空間内に存在していたものを残したまま、魔法陣が消された為、魔法陣にあったものは切り離される事となる。
クラスメイトの体の一部は切断され、地面に倒れ込む。そんなクラスメイト達を気に止める事なく、東雲は歩く。東雲の歩くその方向に居たクラスメイト達は東雲が自身の周りを歪ませていた為、弾かれる。
「まだだ」
一人だけ残ったクラスメイトは東雲の目の前に立つ。
「……無駄だよ。もう諦めなよ」
「ふざけるな。お前ごときが千葉支部の最強の魔法使いなんて……お前は封魔を捕り逃している。そのせいでどれだけ、千葉支部の人間が封じられたか。その者達は皆の記憶から消された。今までの人口の数と封魔が去った後の人口の数は500人の差がある。この数はお前が封魔を倒していれば、もっと減っていた筈だ」
「少し、違うよ。封魔を倒す事が出来れば、封じられた人間や、封じられた記憶等、今まで封魔が封じてきたものは全て解放される。君が封魔に対するその恨みは僕が晴らそう。オリビア・カシーから封魔が現れる情報は聞いている」
「……そこまでして、なんで封魔を?」
「僕がなんで、常に周りの空間を歪ませているのか、分かるかい?」
「……何故だ?誰かに命を狙われているのか?」
「……封魔の影響を歪ませているからだよ」
「影響?」
「僕は、妹と、母親を忘れないように歪ませたのさ」
「……お前に妹、母が居たのか?だが、昔に亡くなった筈だろ?」
「君の記憶では、亡くなった事になっているのか?僕の周りを取り囲んでいる女の子達は最初からその存在を知らなかった様だよ」
「……そうか。封魔は倒せるのか?」
東雲は無言のまま、元東京本部へと向かい歩き始める。




