第629話 九十九一十三(つくもひとみ)
四月十日
奈良支部
様々な武器や、能力者、異能力者が宿した神器を死んだ際に次の転生させずに維持させる方法が多彩に存在している支部である。
そんな支部だからこそ、とある問題が発生する原因も存在している。
例えば、現在大量の肉体の塊が消え、いつも通りの日常が戻った九十九家に一通の手紙が届いていた。
その手紙を手にした長いポニーテールで赤髪の少女、九十九一十三は手紙の宛名がある事に思わず、声を溢す。
「……この文字を書いた人は強いのね」
彼女のその言葉の意味を説明するには、彼女が腰に携えている剣を説明する必要がある。彼女は産まれたその瞬間に九十九家が所有していた聖邪剣[王者覇剣]が独りでに動き、彼女の元を離れる事は無かった。[王者覇剣]を所有した者は[王者覇剣]が認めた者の存在しか認めない。つまり、一十三は強者しか見る事は出来ず、また[王者覇剣]が認めざる者は一十三に触れる事も出来ない。厳密に言うと、触れようとすると[王者覇剣]がそれを阻止する。九十九家でも一十三が認識出来るのは三人だけである。九十九家は百人を越えるがその中でもたったの三人である。
一十三が[王者覇剣]を捨てようとしても、[王者覇剣]は独りでに動き戻ってくると言う。そんな一十三は現在見ている手紙の文字が見えている事からこの文字を書いた人物が強者である事を察する。
「……遅かれ早かれ、その手紙は来ると思っていたが、やっと来たか」
一十三が人の声を聞く事が出来る事は[王者覇剣]がその強さを認めた強者である証拠である。
「お爺様。この手紙の主を知っている様な口振りですね」
「……知っているとも、ワシも数年やっていたからな」
「では、この手紙は……」
「……開けてみると良い」
元日本五大剣客の一人九十九一十四のその口振りからおおよそ手紙の内容を理解しながらも、一十三は手紙の封を開ける。
「……どうやら、この私が日本五大剣客の一人に選ばれた様です」
「そうか。顔合わせもあるだろ?」
「はい。午後に」
「それは急な話だな。日本五大剣客は裏切りもあり、一度解体しているからな。全員新メンバーかもな」
「……私が認識出来る人間は何人居るのでしょうか?」
「少なくとも、四人は認識出来る!」
「その根拠は?」
「そもそも、弱き者は日本五大剣客に選ばれない」
「……そうですか。それは楽しみです。早速、元東京本部に向かいます」
「新たな本部を決める大会でお前は奈良支部のリーダーを任されているんだ闇討ちの可能性もあるからな」
「はい。心得ております」
一十三は満面の笑みでそう答えた。




