第627話 退却
オリビアのその言葉に木崎は戸惑う。
「信用する理由はありませんね。あれば、別ですけど」
「……では、リーダーをここに連れて来ましょう」
(……世界中の全員の脳を支配し、全員の知識を得るその力。オリビア・カシーが動く事は稀と聞くが、そのオリビア・カシーが動くとなると何か企みがあるのか?)
木崎がオリビアの行動に戸惑っているその頃、光に包まれたその空間に一人の男が現れる。
「やあ。木崎雄也。久しぶりだ」
「小淵沢伊織。相変わらずですね」
二人が軽く挨拶を終わらせると、オリビアは割って入っている。
「単刀直入に言わせて貰います。日本からもう引いて貰えませんか?」
「……メリットが無いからね。こっちは」
「小淵沢伊織。貴方達チーム[ドミネーション]は管理する神の傘下のチームよ」
「その記憶は無いよ。封魔に封じられているとも思えない」
「……では、聞いて貰えないなら、チーム[ドミネーション]の全員の脳を支配下に置くわ」
「それは、脅しかい?」
「交換条件よ。ここで引いてくれれば、チーム[ドミネーション]には手を出さないわ。封魔は倒され、貴方達の記憶が戻る日は直ぐに来るのだから」
「……どれも信用出来ないが、優秀な部下を苦しめる訳には行かない。ここで引かせて貰うよ。1ヶ月後、その記憶と言うものが戻らなければ、チーム[ドミネーション]は再び日本に来る事になりますよ」
「それで、構わないわ。(そうそれで構わない。ここに来る前に、東雲将東にも封魔討伐の話はついている。木山廉、檜山仁にも話した。沖田総司も参加してくると言うから封魔の討伐は成功した様なものよ)」
光に包まれたその空間から脱した木崎は自身の背後に魔法陣を展開させる。
「杉崎琢磨。またの機会で会うことがあると言うなら、勝負の続きをしよう」
「待って」
琢磨のその言葉を聞く事なく、木崎は魔法陣をくぐり転移魔法にその身を入れ、その場から離脱する。




