第624話 木崎雄也
「貴方は何も理解していない」
そう言う木崎の背中は白く光輝いていた。
「……やはり、白魔術だけではないと思っていた。白呪術に進化していたか」
「それで終わりですか?」
「違うな。背中の白い光は魔力で造られた翼でも生やすのだろ?」
「……ご名答。大正解ですよ」
木崎は背中の少し離れた箇所に白く輝く魔力によって造られた翼を出現させていた。
「二枚だけか?」
「どうでしょう?」
黒魔術、白魔術の進化は黒呪術、白呪術でありその進化を極めた者は魔神化、聖神化となる事が出来る。魔神化、聖神化は共に魔力を圧縮された翼を出現させる事が出来る。その翼は最低でも二枚であり、その使用者の実力に応じて数が増えていき、最大で十枚となる。
現在の木崎は明らかに聖神化しており、その翼は現在二枚である。
しかし、拓也は木崎の実力から翼が二枚なのは不可解な事だった。
「……貴方は魔神化はしないのですか?」
「……必要があればな」
(随分と余裕だな。その余裕は守田琴乃の存在か、魔法の鎖の能力者がそこに居ると言う事実があるからこそ生まれる余裕かな?でも、その余裕は直ぐに無くなるよ)
木崎が琴乃に目を向けたその瞬間、琴乃の背後に一人の女性が現れる。
「残念ですが、これで終わりです!」
琴乃の背後に立った女性は琴乃の胸を貫く。
「木崎拓也。現役の頃は静岡支部最強と呼ばれていた貴方が私の存在を見逃す筈は無かったでしょ」
「胸を貫いて終わりか?」
「……私の命を代償にこの女の能力封じさせて貰います」
女性は自身の魔力を全て、琴乃の体内へと送り込むと女性は死を迎える。
そんな状況を見ていた拓也は直ぐに理解した。
「封印術か?」
拓也のその言葉に木崎は笑顔で答えた。
「ええ、彼女は昔から死にたがりでしてね。だからその手伝いをしたのですよ。一番厄介な守田琴乃の封印と言う形でね」
「……それは無理があるぞ」
「ええ、知っていますよ。これは時間稼ぎにしかならないって事は。でも、それで十分なのですよ」
「そうか。魔法の鎖については調べがついているみたいだな」
「事前に調べられるものは全て調べましたよ。例えば、秋山妖子と名付けられた沖田総司の膨大な魔力の塊は杉崎拓也の護衛で居る事を、だからこそ、秋山妖子は守田琴乃の危機が迫ったあの場面で助けに入らなかったのは、沖田総司の意思とは異なるからでしょう?」
「良く調べたな。その通りだ。沖田総司の契約によって、俺の警護だけを頼んだ。沖田総司も膨大な魔力の使い道に困って居たからな」




