第623話 秋山妖子
琢磨達が家の中に異常が無いか確認をしていたその頃、チーム[グレイプニル]のメンバーであるロングで金髪、赤い瞳をした守田琴乃、金髪碧眼の守田琴美の双子に加え、黄色髪をした秋山妖子の三人は杉崎家の当主杉崎拓也の護衛の任務中であった。
「……侵入者が二人来ました」
空間魔法を扱う琴美が魔力を張り巡らせたレーダーに引っ掛かった事によって、琴美はその事実を拓也に伝える。
「そうか。では、ここで迎え撃つ!」
拓也の言葉を受け、護衛の任務についていた二人は拓也の後に続き、歩きだす。
「妖子。さっきに行ってて」
「ええ。貴女は?」
「琴乃を連れてくるわ」
「分かりました」
琴美はさっきまで居た部屋に戻り、立ち尽くしている琴乃に近づく。
「琴乃、行きましょう」
琴美のその言葉に琴乃は一度頷くと、歩き初め拓也達の後に続く。
「……ここで撃退する」
拓也のその一言に続いていた三人は立ち止まる。
「……秋山、体はどれぐらい持つ?」
「……小一時間でしょうか。昨日沖田様から魔力は受け取りましたが、魔力が尽きれば、この体は沖田様の元に戻る事になります」
「そうか。(世界でただ一人黒魔術、黒呪術の全てを扱う事の出来る天才であり、若くして沖田家の当主となり、総司の名を襲名した程の男が秋山の体の維持を一時間しか保てないとは、術者である沖田自身に何かあったのか?)」
秋山妖子の存在は沖田総司の様々な黒魔術を組み合わせた事によって、造られた存在である。
九尾の狐に黒魔術の降霊術、妖術、錬金術、変装術等を使用して造られた魔力の塊の体に入れ込まれたのは沖田が造り出した魔獣である九尾の狐だ。随時沖田の魔力を必要とし、魔力が尽きれば、九尾の狐は沖田が用意した魔力の塊である体は消滅し、九尾の狐は沖田の体内へと戻ってしまう。静岡支部には妖子しか居ないが、妖子の様な存在は日本各地に沖田が配属させており、その数は百体以上を越えている。
そんな事実があるからこそ、拓也は妖子の体がどれぐらい持つのか質問をしていた。
「……来たな」
待機を続けていた拓也は侵入者のその存在を目にすると、戦闘体勢を整える。
「……四人だけか?」
杉崎家に侵入を果たしたチーム[シャイニング]のリーダー木崎雄也はその体を隠す事なく、その身を晒した。
「不満か?」
自信に満ち溢れた雄也に拓也は冷たくあしらう。
「……構わないさ。順番は変わるが全員やるからな」
「ここでやられる奴がこの先誰をやれると言うんだ?」




