第621話 火炎炎上(バーニング・フレイム)
戦闘体勢を整えた伊吹は攻撃を開始しようとしたその時、老人の足元から火柱が天高く燃え上がる。それと同時に一瞬で老人は灰と化した
「……この能力は火炎炎上。……居るのだろう?優斗」
伊吹のその言葉に答える様に赤髪の少年ー優斗は姿を現す。
「久しぶりだね。奏ともさっき会ったんだろ?」
「……その様子だとまたケンカした?」
「このままだと、お前ともすることになる。二人揃って、防衛局に入りやがって」
「……お前が防衛局を憎んでいるのは知っていたさ。それでも俺達が防衛局に入ったのには理由がある」
「どんな理由があろうとお前が俺を裏切った事に変わりは無い」
伊吹は足早にその場から離れていく。
優斗はそんな伊吹を追いかける事はしなかったが、話は続けていた。
「お前が一人になって、チーム名を[唯我独尊]に変えたって聞いた時、お前らしいと思ったよ。それでも、俺達は防衛局を辞めるつもりはない。封魔を倒すまではなぁ」
優斗の口から封魔の名が出たことによって、伊吹の足は止まる。
「封魔だと?」
「俺達はお前の能力を元に戻そうと動いているんだよ」
「だったら、必要ない。封魔静岡支部から離れる時期も、俺が戦う舞台も全てが揃っている」
「ふざけるな。お前は兵庫支部がまだ掴んでいない情報を知っていると言いたいのか?」
「そうだ。俺の能力は俺がなんとかする。お前たちは防衛局に居たければ、居れば良い」
伊吹はそう言い残すと再び歩きだす。
伊吹の姿が見えなくなっても、優斗はその場に残り続けていた。
「奏。居るんだろ?」
優斗のその言葉に応じる様に、優斗の右側の空間がこじ開けられる。
そこから顔を覗かせた奏はため息を溢す。
こじ開けられた空間から顔を覗かせる奏は周りから見たら、顔だけが浮かんでいる様に見えるこの状況に慣れている優斗は何も触れる事なく、会話を続けていた。
「封魔の情報をどこで手にいれたと思う?」
「私に聞かれても分からないわよ。それよりも、防衛局は今慌ただしいわ」
「大量の肉体の塊だろ?」
「その対処は終えているわ。何でも、東京本部を解体して東京支部にするみたいな話で持ちきりよ」
「……だったら、どこが本部になるんだ?」
「聞いた話だと、本部を決める大会を開くと言っていたわ。詳しくは分からないけど、兵庫支部にも影響があるみたい。私は一度防衛局に戻るわ」
「分かった」
こじ開けられた空間から顔を覗かせていた奏は顔を空間内に戻すと、こじ開けられた空間は塞がっていく。




