第619話能力不明(レベルエラー)
伊吹が兄である利明へ反論しようとしたその時、目の前の景色が一瞬で変わり、光に包まれた空間に変わっていた。
「……なんだ?」
突然の出来事に伊吹は戸惑いながら、回りを見渡す。どこを見てもその空間には奥行きはなく、永遠を思わせる程であった。
伊吹以外の誰も居なかった筈だが、伊吹は背後に目を向ける。
「……あら?貴方の精神世界での私は殺気も気配も無いのに何で気がついたのかしら?」
「……なんとなく」
「説明になって無いわね。それでも証明出来ないのかしら、能力不明である貴方らしいけど」
「で、どうやったら、ここを出られるんだ?」
「取りあえず、私の話を聞いて貰おうかしら」
「……その前にここはどうだ?何よりも、お前は誰だ?」
「良いわ。答えましょう。私は管理する神傘下No.10チーム[ブレイン]のリーダー……オリビア・カシーよ。私は世界中の人間の脳の情報を得る事が出来るのよ。それを利用して、貴方の脳内に入り込んだのよ」
「……つまり、どうゆう事だ?」
「簡単に説明しましょう。ここは私が造りあげた貴方の精神世界。この精神世界は貴方と私以外の存在は許されていない」
「何であんたはそんな事が出来る?」
伊吹のその問いにオリビアの頭から光輝く脳が頭上に現れる。
「なんだ……それ?」
「神の人体シリーズの脳を司るのが私よ。この力のお陰で、今こうして貴方と話が出来る」
「……この空間はどうやったら、出られる?」
「私が元に戻すしか無いわね」
「……話を聞いてやるよ」
「それしか、貴方の答えは無いものね」
「手短にね」
「……近々、日本で大きな大会が開かれるわ。貴方にはその大会の第三回戦に出てもらいたいのよ」
「……随分と正確に指定してくるんだな」
「ええ、その大会の第三回戦で貴方の能力の一部を封じている十鬼シリーズの封魔が現れるわ」
「封魔……あいつは静岡支部の地下で魔法の鎖によって、封じられているはずだろ?」
「私がそれを解き放つわ。本当は一回戦でやりたかったんだけど、時間思ったよりもかかるから、第三回戦にお願いしたいの」
「俺がやる理由は?」
「分かっているでしょ?」
「俺の能力が能力不明になっている事が関係しているのか?」
「ええ、貴方の能力については封魔によって封じているわ」
「……封魔を倒せば、俺の能力がなんなのか、そして、全てを出しきる事も出来るのか?」
「約束するわ」
「良いだろう。やってやる」
「最後に一つだけ言っておくわ。倒すのは貴方だけではないからね」




