第617話 十鬼(じゅっき)
「……これから、日本では新たに本部を決める大会を行う。日本中の上層部はもうやるつもりよ。日本中を包もうとしている大量の肉体の塊の対処も終えていないのにね」
「それで、その大会に何かするつもりか?」
「ええ、十鬼シリーズはご存じ?」
「管理する神No.8と言われるチーム[パンドラ]のリーダーに、して賢者の石を初めて造ったパラス・スケールが造り出した十体の鬼だろ?」
「その通りよ。その中の封魔を倒して貰いたいの」
封魔の名を聞いた瞬間から、明らかに春菊の表情は変化した。
十鬼シリーズの中で一番名の知られたのが封魔である。
封魔は無数に造り出す事の出来る赤い剣状のものを対象に刺すことによって、あらゆるものを封じる事が出来る。
例えば、人間なら動きを封じるや魔法、能力、異能力を封じる等、殆どのものは封じる事が出来る。
その被害は日本にもあり、人間が別空間を封じられたり、記憶を封じられたり等、その被害は少なくは無い。
「何故、ここで封魔なんだ?」
「その大会中に出現させるからよ。そして、貴方にはその大会の第三回戦で封魔の討伐をお願いしたいの」
「断っても良いんだろ?」
「構わないけど、お勧めはしないわね。私の異能は世界中の人間の全ての脳を覗くだけで、今みたいな空間を造るだけだと?違うわ。相手の脳に世界中の人間が持つ記憶の情報を送ったら、どうなると思う?」
「それは脅しか?」
「取り引きよ。山梨支部防衛局に席を置く全ての人間を守りたいなら、私のお願いを聞いて貰いたいの」
「……俺ではなく、皆を人質とするか?」
「貴方にはそのほうが良いと思って」
「……分かった。良いだろう。ただし、必ず勝てると約束は出来んぞ」
「構わないわ。貴方以外にもお願いするから」
「……そうか。分かった」
春菊がそう告げたその瞬間、光に包まれた空間は消え去り、春菊の日常は戻ってくる。
「どうかしましたか?」
「……嫌、何でも無い」
(十鬼シリーズは日本で造られたと言う事もあって、日本での被害が最も多い言われるが、封魔が何を封じているのか、俺には分からない。もしかしたら、管理する神の重要な何かを封じている可能性もある。その可能性がある中、本当に封鬼を倒しても良いのか?俺がそれを考えても意味を成さないか。俺以外にも頼むと言っていたし、オリビア・カシーがここまで動くからには、確実に封魔を倒す為に日本で何人もの人間を裏で操るだろ。それは山梨支部の上層部にまで手を回すだろう。俺が断れない様に、だったら俺は封鬼をたおす!)




