第602話 動き出す兄
紫音は氷の地面に滑る事なく、着地に成功すると、氷の元へと走り出す。
「……紫音。お前は俺には勝てない!」
氷は出現させていたオリジナルの氷竜を紫音に向けて、解き放つ。
破壊や干渉を一切受けないオリジナルの氷竜のその脅威を理解している紫音は氷神の花畑を発動させ、様々な氷で造られた花や木などで防御体制を取る。
「そんな、雑草を並べても、止められねぇよ!」
氷のそんな叫び通りに紫音の造り出した氷の花や木等は氷のオリジナルの氷竜によって、切断されると、氷によって、繋ぎ止めてられていた。
切断され、繋ぎ止められた紫音の氷はその機能は停止していた。そんな紫音の氷とは違い、氷の氷竜は止まる事は無い。
(……今の僕の氷では、氷を止める事は出来ない。やっぱり、あそこに行くしかない!)
紫音はこの状況を打破する事が出来る可能性のある場所へと向かう覚悟を決める。紫音はオリジナルの氷竜の対処をする事なく、背を向けたまま走り出す。氷の城へと
「……どこにいくつもりだ?」
走り出す紫音を見て、氷は疑問を抱く。
そんな氷の疑問は直ぐに理解出来ることになる。
何故なら、紫音は氷の城の中へと入って行ったのだから。
「……まさか……そうか。あそこにいくつもりか」
紫音の向かう場所を理解した氷はオリジナルの氷竜を消し去る。
オリジナルの氷竜の追ってが無かった事から、紫音はその事を気にしながらもとある部屋の前で立ち止まる。
「……あの頃のままだね。母さん!」
氷付けになった母親を眺めると、紫音はどこか懐かしそうに呟く。
「当たり前だ。俺が維持していたんだからなぁ」
「氷」
背後に居る氷を背に感じながらも、振り返る事なく紫音は氷付けになった母親を眺める。すると、氷付けになっていた母親を包んでいる氷は溶けていく。
「何の真似だ。氷!」
「……お前の目の前で母さんの最後を見せると決めていたからなぁ」
氷が失くなり、肌が露出した母親の肌は腐敗していく。
紫音は氷の胸ぐらを掴むと、氷の顔を手繰り寄せる。
「何でこんな事を?」
「俺の暴滅氷神竜は親父が死んだ時に完全なものとなり、覚醒も出来る様になった。だったら、俺と同じく儀式によって、異能を取り替えられたなら……紫音、お前も同じだろ?」
「それが何の意味がある?」
「意味なんて無い。お前も本来の氷神の花畑を使え!全力のお前を倒して、俺は氷川家と決別する!」
「……一人になる事が出来れば、逃げられると思うのか?」
「……なんだと?」




