第60話 全壊する町
……急にどうしたの?
女の人がキョロキョロと……まるで目が見えなくなったように
一人の男がゆっくりと近づいてくる。
「貴方は誰?」
「悪いが、名乗る名を持ち合わせていない。だが、皆俺を無神と呼ぶ」
「無神?」
特徴もなく、白い髪……個性までもが無だ。
「君には才能がある。それはここに居るものたちとは違った才能だ」
「才能?」
「そうだ。この世界を変える程の才能だ。この間違った世界を変える程の」
「私なんかには無い。この能力がある限り私は……」
「違うな。その力があるからこそ君に相応しい居場所がある」
「居場所?」
目映い光?
「危ない」
目映い光の剣が飛んで来る。
「大丈夫だ。俺は[無神]だ」
目映い光が無くなった。
「……本当にこんな私に居場所なんてあるの?」
「来れば、分かる。ただし条件がある」
「何?」
「半壊した町を全壊させろ。君の決意を見せてくれ」
こんな私に居場所を?
こんな私に期待をしてくれるの?
「すぐにやって見せます」
無神さんは少し上に浮上するとそこで止まった。
……私の居場所となる場所があるなら私は見てみたい。
「はぁはぁはぁ、終わりました」
私は生まれ育った町を全壊させた。
「……その様だな。では、行こうか」
無神さんはゆっくりと空を飛ぶ。
私は背中から生やした悪魔の手を羽ばたかせ、ついていく。
「ここだ」
「……ここですか?」
かなり広い空き地があるが建物があるとは思えない。
……あれ?
何も無かった筈なのに建物がそこに現れた。
「これは……一体?」
「俺が建物全体の色を[無]にしていただけだ」
無神さんはそんな事も出来るんだ。
鳥達がぶつかる。
「あれ?」
すり抜けた?
ここに私の居場所があるのだろうか?
無神さんは電話をしている。
「入るぞ」
「はい」
鳥達はすり抜けたのに私達は入れるのかしら?
無神さんは扉を開け、中に入っていく。
私はその後に続く。
とても広い。それが素直な私の感想だ。
「ここはチーム[ゼロ]が住まう場所だ。女も多く、まとめ役が欲しかった。君に任せたい」
「私に?」
「しばらく、考えてくれ」
「はい」
「案内はあいつに任せる」
「あいつ?」
無神さんの目線の先に一人の女性が立つ。
「……綺麗」
思わず口に出していた。
黒い短髪で艶やかな髪、赤い瞳、透き通った白い肌。
綺麗な女の子はクスッと笑うと真っ直ぐ歩いてくる。
「貴女が神の義手ね?」
「はい。そうです」
「ふ~ん」
綺麗な女の子は私の周りを回り始めた。
視線が痛い。
綺麗な女の子は手に出し、笑顔で迎えてくれた。
「私、ドレア・ドレス。宜しくね」
「はい。お願いします」
外国の人?
八重歯だ。
やっぱり綺麗だ。
「では、案内は任せるぞ」
「はい」
無神さんは外に出ていった。
「綺麗ね」
「えっ」
「その髪。長くて、金髪で素敵よ」
「ありがとうございます。……そのドレアさんも」
「敬語は良いわ」
「はい……うん」
この人と友達になれるかな?