第599話 紫音に任せて
紫音のその提案を受け、正平は動き出す。
「……良いだろう。廉と仁は空を飛べるな?」
正平のその提案を受け、廉は戸惑いながらも答える。
「……飛べますけど、それが?」
「ここは紫音に任せ、怪我人は俺が面倒を見るためだ。その間、廉と仁には東京本部に戻って貰おうと思ってな」
「待って下さい。紫音一人にやらせるつもりですか?」
「そう言った筈だが?」
「……これだけの人数が居るんですから、複数人でやるべきです」
「俺だって、そう思うよ。でもな、敵はもう一人なんだ。ここの勝敗はさほど、問題にはならない。問題は東京本部だ!」
「……紫音の命がかかってます」
「だから、俺が残る。不滅の鳳凰は治癒も出来るからな」
二人の会話のその最中に仁は背から少し離れた位置に紅色の魔法の翼を出現させる。
「お前が行かないなら、俺は先に行くぞ」
「……それでも、リーダーなのかよ」
「そうだが?」
「副リーダーがあんな状態なのに、それを見捨てていこうとする奴のどこがリーダーだ?」
「俺がここに残っていて、あいつに何をしてやれる?病人を慰めるかの様に、優しく話しかければ良いのか?」
「それは……」
「お前もここに残って居ても、役には立つことは無いだろう。まだ東京本部の方がやることもあるだろ?」
仁のその言葉に反論も出来ずに、言葉を詰まさせていた廉に紫音はゆっくりと近づいていく。
「廉。行ってくれ!」
「紫音?」
「僕なら、大丈夫さ。それに氷は異能力者だ。仲間も近くには居ないみたいだから、移動手段も無い。廉たちを追いかける事は無いよ」
「勝算はあるのか?」
「やれる事は全てやるよ」
「……」
「僕を信じてくれ」
今まで見たこともない、紫音のその表情を目にして廉は決意する。
「分かった。ここは紫音に任せる。東京本部は俺に任せろ!」
廉は炎神の魔武器を発動させ、炎神の魔装を造り出す。
裾、袖部分が燃えている黒いマントを装備する。
廉はマントの炎を激しく燃えさせると、ゆっくりと浮いていく。
そんな廉を置き去りにし、仁は紅色の魔法の翼で飛んでいく。
「待てよ」
廉はスピードを上げ、仁を追いかけていく。
「待てって言ってるだろうが」
やっと追い付いた廉は仁と同じ速度で飛行を続けながら話しかける。
「……何故、待つ必要がある?」
「東京本部に行くんだから、一緒に行けば良いだろう?」
「お前と仲良しごっこをするつもりはねぇ」
「……そうかよ。……まぁ、今回の戦いが終わったら、日本はどうなるんだろうな?」




