第597話 繋ぎ止められる氷
オリジナルの氷竜は碧人の氷の翼を利用して造られた氷の壁を切断し、その箇所を氷で繋ぎ止めながら、碧人の元へと向かっていく。
しかし、碧人には焦りはない。
現在、碧人の右手には青い雷が纏われており、それをいつでも放つ事が出来る状態だった。
氷の金剛石が覚醒した青き閃光の氷剛石となった現在の碧人の異能は通常に氷の造形に加え、青い雷を放つ事が出来る。その青い雷を触れた箇所なら、全てを凍らせる事が出来、覚醒前の氷の金剛石では出来ない内部に氷を造り出したり、凍らせる事が出来る。
碧人が右手に纏わせている青い雷を氷に放ち、氷の全身に雷をぶつける事に成功すれば、雷に撃たれたかの様なダメージを与えられるだけではなく、その雷を氷の内部に送り込む事によって、氷の内部をダイヤモンドと同等な強度を誇る氷を造り出す事が出来る。
それに成功すれば、氷の全身の内部の関節をダイヤモンドと同等な強度を誇る氷によって、凍らせることで動きを静止させる事が出来る。
だからこそ、碧人は背後に迫るオリジナルの氷竜を避けようともせずに、雷を撃つタイミングを伺っていた。
「……終わりだ!」
「何が終わるんだ?」
「このくだらん勝負を、だ!」
碧人は右手に纏わせていた青い雷を放出させる。
放たれた青い雷は真っ直ぐ、氷の元へと向かって、伸びていく。
「これで終わりだ」
雷を受けた氷は倒れ込むと、動く事は無かった。
そんな氷に対して、雷を体内へと入れ込むと、氷の体の内部を凍らせていく。
「もう動けまい」
戦闘を終えた碧人は振り返り、静止しているオリジナルの氷竜を目にして、勝利を確信していた。
「残念だ!」
氷のその言葉が耳に入った事によって、碧人は直ぐ様に振り返る。
しかし、碧人が氷の姿を目にする事は無く、首を切断されるとその箇所は氷によって、繋ぎ止められていた。
「不思議な感覚だろ?」
氷の異能のよって、碧人は首と頭の間に分厚い氷が存在していた。
しかし、碧人の首元からは血が一滴も流れる事がないだけでなく、痛みも無く、活動に何ら影響を及ぼすとは考えられない程である。
碧人の変化と言えば、見た目は首と頭の間に氷が挟まっており、碧人自身としては、視界が高くなった位である。
それは氷が頭と首の間に挟まった事によって、その分視界が高くなったからである。
「……あ……何で俺は喋れる?」
試しに声を出した碧人は声を出せるその事実に激しく動揺する。
そんな碧人を嘲笑う様に氷は告げる。
「簡単な話だぁ。それが俺の異能ー暴滅の氷神竜だからだよ」




