第596話 氷と雷と竜
氷が造り出したオリジナルの氷竜が碧人めがけ、移動をし始めると同時に飛行を続ける碧人は右手に青い雷を纏わせる。
碧人はそれを直ぐに放とうとせずに、タイミングを伺いながら、飛行を続けていた。オリジナルである氷竜が碧人の目の前に近づいたその時、碧人は右手に覆われていた青い雷を無数のオリジナルの氷竜に向けて放つ。
青い雷は無数のオリジナルの氷竜に触れ、その雷はオリジナルの氷竜の体の全てを包み込んでいく。
(氷系統の異能だった筈だが……今は雷系統のみだなぁ。だが、間違いなくこいつの覚醒は雷と氷の両方の属性の筈だ。背中の翼は氷だからなぁ)
オリジナルの氷竜に雷を纏わせるだけで終えている碧人のその行動を見て、氷は碧人がまだ手の内を晒していない事を考えていた。
オリジナルの氷竜を包んでいた青い雷部分から碧人の氷が出現を始める。
「……氷?」
「ただの氷じゃねぇよ。ダイヤモンドと同じ強度を誇る氷だ!」
「雷が箇所を凍らせるのか?」
「あぁ、因みに俺の放った雷はお前のオリジナルの氷竜の内部に送り込んだからな」
「内部?」
今まで内部破壊を行おうとしようとした相手は居なかった為、氷自身も内部破壊が可能なのかは知らなかった。
オリジナルの氷竜は碧人のダイヤモンドと同等な氷によって、全て包まれるだけで、破壊される事は無かった。
その事実は氷のオリジナルの氷竜は内部破壊が出来ない事を意味していた。
碧人の異能によって、内部に送られた雷によって、そこからダイヤモンドと同等な強度を誇る氷を出現させ、その氷を内部から増幅させオリジナルの氷竜を内部から破壊を試みていた碧人だったが、その効果が見られなかった事に思わず、舌打ちを打つ。
碧人の氷によって、動きが静止したオリジナルの氷竜を避け、碧人は氷の元へと飛びながら、接近を試みていた。
しかし、オリジナルの氷竜は碧人のダイヤモンドと同等な強度を誇る氷を切断し、碧人めがけ、再び戻りながら追いかけ始める。
そんなオリジナルの氷竜の速度は今までの速度とは異なる早さで移動していた。
その速度は飛び立つ碧人速度をはるかに越えており、碧人は直ぐに追い付かれる事になった。
碧人は背中から生やしていた雷に纏われていた二枚の氷の翼を切り離し、その二枚の翼を素早く、氷を広げ、一瞬にして巨大な大きな氷の壁を築き上げる。
「……その翼はそう言う意味か」
わざわざ、自身の速度を下げて、飛んでの移動を選んだ碧人の行動をようやく、理解した氷は碧人のその考えを理解することが出来た。
 




