第59話 無神
「ただの暴走した能力ってわけじゃ無さそうね」
女は余裕そうに浮きながら告げた。
黄金宝石の剣と同じ宝石を身に纏った女何故か浮いている。
「……私は負けない」
私は神の義手の能力を発動させる。
私の周りに黒いオーラがまとわりつく。
(意識が……飛びそうだ)
「分からないの?」
「何だと……はぁはぁ」
「貴方は能力向上に到達しようとしているのよ」
「はぁはぁ能力向上?」
私は聞き覚えの無い能力向上に首を傾げた。
「そうよ。魔法は進化すると黒魔術、白魔術に別れ、能力が進化すると能力向上と呼ぶの」
「違いますよ。川上玲奈。あれは異能力者として覚醒したのさ」
女の後ろに一人の男が浮いている。
私はどうなってしまうのか……その疑問ばかりだ。
私の神の義手はあの女の人が言うように能力向上なのか?それともいきなり現れた男が言った覚醒なのか?
「……お尋ね者や曲者達も束ねる。チーム[ゼロ]のリーダーさんがこんな所で何をしているのかしら?」
「貴方こそ、家に娘が居るにも関わらず……何をしているんですか?」
「……まさか?」
「安心して下さい。娘さんには手は出しませんよ」
「では、その言葉を信じようかしら、それでここに来た目的は?」
「覚醒対象を持ち帰る」
「……無神と貴方は呼ばれている様だけど私もそう呼んだら良いのかしら」
「……俺に名は無い。だが、俺の異能は無神だ」
「貴方程の男が何故管理する神の傘下に入っているの?」
「……貴方に答える義理は無い」
あの二人は何を話しているの?
私は瓦礫の山を手の形にする。
あの二人を一気に殺す。
無数の手を勢い良くぶつける。
……いきなり現れた男が私を見つめる。
その瞬間、私の造った手は消えた。
破壊では無く、跡形も無く消えた。
「無駄だ。俺には効かん」
突然の出来事に私はただ驚いていた。
「何をしたの?」
「俺の異能は生物以外を全て[無]にする異能ですよ。貴方には少しの間消えて貰います」
「私が納得すると思っている」
「しないても、貴方は地べたに這いつくばる事になる」
女の人が持っていた目映い光を放っていた剣が消えた。
すると、女の人の様子が一変した。
「はぁはぁはぁ」
「今までこんな事は無かったでしょう。異能力で造られた武器が破壊されれば精神的に殺れる。異能力で造られた武器は破壊される事は滅多に無い。特に本物であれば尚更」
「はぁはぁはぁ」
「黄金宝石の剣は宝石の剣を造る異能力で本物と偽物があるがどうやら今回は本物だった様だ。それでは、少し消えて貰います」
「生物を[無]に出来ない貴方に何が出来る?」
「貴方から全ての色を[無]にします」
「……そんな事が……出来る……訳が……」
「貴方にはこの日本でもう少しやってもらいたい事が有ります。今から十分間だけ貴方だけ見えている全ての色を[無]にします。即ちもう目は使い物にはなりませんよ」