第587話 氷神竜の脅威
六三四に対して、待機を続けていた楠木村正は思わず、叫ぶ。
それはチーム[ブレイド]のリーダーである六三四が動こうともしない、情けないその姿に我慢出来ずに村正は姿を現す。
「……全く、副リーダーに心配されるとはリーダー失格だな」
村正のその呼びかけもあって、六三四は覚悟を決める。
目の前に居る氷は簡単に倒せるとは思えない事から、背後に迫りつつある巨大な氷竜を倒す事に決めた。
六四三は氷に背を向け、走り出す。
「……敵に背を向けるとは、なんと愚かな」
六三四のその行動を嘲笑うものの、氷は自ら手を下す事はなかった。何故なら、する必要が無いと氷は考えていたからだ。
「一気に破壊するぞ!」
村正の隣に立った六三四は大きく口を開く、巨大な氷竜の破壊の相談を持ちかける。
「あぁ、行くぞ!」
村正は神器を造り出すと、それを手にする。
どす黒い、異形な形をした剣である冥府邪剣を手にした村正は冥府邪剣からどす黒いオーラを放出させる。
冥府邪剣は人工神器として、村正の体内に入れ込む事によって、人工能力者として機能している。
冥府邪剣はどす黒いオーラを放出して、そのどす黒いオーラに接触したものの時間を自在に時間を進ませる事が出来る。
つまり、冥府邪剣から放出されるどす黒いオーラに迫り来る巨大な氷竜に接触させる事に成功させれば、巨大な氷竜の時間を進ませ、攻撃をやり過ごせる事こそが、村正の企みだった。
そんな村正の攻撃を見て、六四三は攻撃を控えた。
このタイミングでは、かえって邪魔になるからだ。
「……ここで止める」
村正は冥府邪剣から溢れ出るどす黒いオーラを巨大な氷竜へと向かって放つ。冥府邪剣から放たれたどす黒いオーラによって巨大な氷竜の全てを一瞬にして、包み込む。
冥府邪剣のその効果によって、巨大な氷竜の時を進ませる事が出来る。それによって、氷は水へと変化させる事も可能だろう。
しかし、巨大な氷竜はその規模もサイズもなんの代わりも無く、速度を保ったまま、六三四、村正へと迫り来る。
「お前の剣の効果は無しか」
「あぁ、時の経過を受けていない」
「巨大な氷竜は破壊不能と聞いたが、それ以外の干渉も受けないのかな」
「だったら、お前の一刀両断でも破壊出来ねぇのかよ」
「あぁ、弾かれる。俺が能力を使用している間はあいつの氷竜に体は切断されないが……」
「……俺は簡単に切断されるだろう。そして、最初に戦っていた二人の様に切断箇所は氷によって、繋ぎ止められる……だろう?」
 




