第586話 氷神竜籠手(ブリザード・ガントレット)
その場に存在している氷竜の口から氷竜が勢い良く、飛び出ると六三四の元へと食らいつく為に、動き始める。
「……まぁ、また弾かれるだけだろうがなぁ。さってと。俺も久方ぶりに本気でやるか!」
氷は両手から冷気を大量に放出させると、それを氷竜へと変化させる。その氷竜は氷の両手に装備され、両手は氷竜の頭に覆い尽くされ、胴体は腕まで伸びており、それは肩を伝って、尾は氷の尻付近から地面に届く程の長さで存在していた。
走り続ける六三四はその分かりやすい氷の変化に警戒を強めながら、氷に接近していく。
そんな六三四の体には無数の氷竜が体に食らいついているが、全て六三四の体に触れると同時に弾かれていた。
(やっぱり無理か。俺が直接やるしかねぇなぁ)
氷は出現させた氷竜では六四三に歯が立たない事から自身で六三四を倒す事を決め、走り出す。
「誉めてやるよ。俺に氷神竜籠手を使わせた事はなぁ。でもなぁ、勝敗は簡単につく。お前は何も理解出来ていない!」
氷のその言葉と同時に今まで氷竜によって塞がれていた道が冷気へと変換する。
「何?」
六三四は走りながらも、戸惑いを隠せずに居た。
わざわざ、逃げ道を作る様な真似をこのタイミングでやった意味が分からない上に理由があるのかさえ定かでは無い。ただ一つ言えるのは、そんな事に気を取られていては、迫り来る氷の攻撃を対処出来なくなることは六三四も理解していた。
「……理解出来てねぇなぁ!」
足を止め、語りだした氷を見て六三四も足を止める。
「何だと?」
「何で俺が暴滅包囲網を消したのか、分かっているのかと聞いている。その様子から理解は出来てない様だがなぁ」
「それで何の為だ?」
「直ぐに分かる」
「取り囲んでいた氷が無くなった事で破壊不能な氷はまた使えるのだろ?」
「……お前の考えでは、二体までの氷竜しか出せないと考えているんだろ?」
「それ以上出せるのか?」
「あぁ、もうここに来るからなぁ」
氷のその言葉通り、六三四の背後から巨大な氷竜が姿を現す。
「母を守る為に破壊不能な巨大な氷を使用しているのだが、お前の力があまりにも厄介そうだからなぁ。だからこそ、短期決戦で終わらせて貰う。精々頑張って避けろよ。ただし、正面は俺が立ち尽くしているがなぁ」
正面には氷が立ち塞がり、背後からは巨大な氷竜が迫り来るこの状況は六三四によっても、予想していなかった状況に直ぐにどうするべきか判断することは出来なかった。
「しっかりしろ!」




