第584話 氷神竜鎧装(ブリザード・アーマー)
六三四のその行動によって、一直線上に氷の床、天井が切断される。その切断は氷に向かって切断を続けていた。
(目には見えない衝撃波か?それとも、ただ切断しているだけか?……どちらにしても、俺のもとまで来るなぁ)
六三四から放たれたそれを氷は初見だけでは全てを理解することは出来なかった。しかし、このまま何もしなければ氷自身にも何らかの影響があると推測した氷は行動に移す。
全身から冷気の放出を続けていた氷は防御の為、冷気を右手に集中させる。次第にその冷気は氷竜の姿へと変化していた。
その氷竜の全ての箇所は本来の形とは異なる程の変化を見せる。
「……氷神竜鎧装」
もはやそれは竜の姿をしていなかった。
氷竜の形から変化したそれは巨大化しており、氷の床、天井と接触していた。まるで壁と化した氷の防御に六三四の攻撃が衝突する。氷のその防御によって、六三四の攻撃は完全に止められていた。
「……」
「俺の氷神竜鎧装を破壊出来なかった事は気にするなよ。今まで破壊出来た奴は居ねぇんだ」
「……そうか。なら、今日初めて破壊する事になるな」
「無理だ!俺の暴滅氷神竜は氷竜を造り出す異能なんだが、その中でも破壊不能な氷竜が存在する。俺の部屋と母の為に使用されている氷を差し引いても、俺は破壊不能な氷竜を二体を造り出せる事が出来る。今の攻撃を防ぐのに二体分を使用して防御した。床と天井を届いていたろ?」
「……それがなんだ?」
「人一人通れる隙間はねぇって事だ。つまり、お前の攻撃は全て防げるって事だ」
「……防げる攻撃もあれば、防げない攻撃もある」
「で、お前は俺の防御を崩せるのか?」
「やるだけ、やってみるさ」
「……そう。まぁ、頑張れよ」
六三四は勢い良く走り込む。
そんな六三四に対して、氷は至る所の氷の天井、床から氷竜を出現させる。出現した無数の氷竜は六三四の元へと向けて、解き放つ。
「……暴滅氷神竜によって、造られた氷竜に接触した物は全て切断された上に、切断箇所は氷によって、繋ぎ止められる。回避か、防御しか、防ぐ手立てはねぇぞ!」
氷のその発言を理解しても、六三四は回避や防御をする事なく、走り続ける。
「避けねぇのか?……まさか、氷竜を俺の元へ向かわせようとしているのか?だったら、無駄な事だ。氷竜は俺の異能によって、造られた物だ。氷竜は俺に触れたら、冷気へと変換される。無駄な事はするもんじゃねぇぞ」
氷の言葉を聞いても六三四が止まる事はなかった。




