第583話 繋ぎ止められた氷
正宗、デュークの二人の体は現在氷によって繋ぎ止められている。
そんな二人が出来るのは、ただ目の前に居る氷を見つめる事だけしか出来ずに居た。
「体の至る所が切断されては、魔法も神器も出せないだろう。まぁ、出せた所で俺の相手にはならないがなぁ」
氷のその言葉通り、二人はその場から立ち去る氷を止める事もせずに眺める事しか出来ずに居た。
「……氷の竜が通り過ぎ、その場に氷を残していたから戦闘があったのは分かっていた。本人がもう、現れるとは思わなかった」
氷の城内に正宗、デュークと共にやって来ていた九十九六三四は目の前に現れた氷に驚きながらも対応していく。
「嘘をつくなぁ。一線に伸びた氷を辿れば、いずれは俺の元にたどり着けると思っていたから俺達はここで出会えたんだろう?」
「……そうだな。お前がここに居るって事は……」
「あぁ、あいつらなら」
氷は六三四の目の前から、移動する。
それによって、氷の背後に広がる光景を目にすることになる。
そこには体の至る所が切断され、氷によって繋ぎ止められた二人の姿を六三四は目にして、先程とは違った目付きとなる。
「……九十九家の時期当主の座を女である九十九一十三に奪われたお前でもそんな殺意に満ち溢れた目をするんだなぁ。まぁ、お前ら二人では俺には勝てねぇよ」
「二人?」
「とぼけるなぁ。殺気を隠せてねぇ奴が居るだろう?」
「出てくるな!」
「……お前一人でやるつもりか?」
「そのつもりだ」
「……九十九一十三クラスなら何も言わねぇけどよ。お前クラスなら忠告しておくぜ」
「……関係の無いことだ。俺は俺だ」
「お前はお前?だからこそ忠告してやってんだろうが、お前だからこそ、俺には勝てねって事だ。理解出来ているか?」
「それだけの力を見せてから、ほざけ!」
「そうするか。言っても、理解出来る奴でも無い様だからなぁ」
氷は全身から冷気を漂わせる。
「……まぁ、氷系統なものだよな」
「氷系統な事を見抜いたぐらいでは俺に勝てる理由にはならねぇよ」
「だろうな。俺は俺の出来る力を振るうだけだ」
「当主になれない力でか?」
「俺よりも強く、皆を率いる力があるなら、その者が率いるべきだ」
「……なんだ、それ?力の無い奴の言い訳は見苦しいなぁ」
「そうだな。そうだろうな。だが、俺の力はお前のその考えを改めさせる」
「その力があるとでも?」
「無いとでも?」
「そうか。では、見せて貰おう」
氷のその言葉に答える様に六三四は右足を氷の床に強く、踏みつける。
 




