第582話 氷神竜一線(ブリザード・ライン)
正宗の右肩に乗せていた氷の右手から放出されている冷気はみるみると氷竜を造り出す。
「……成す術も消え失せろ!氷神竜一線」
氷の右手から放たれた氷竜は正宗の肩を切断すると、離れた腕を氷で繋ぎ止めながらも止まる事なく、正宗の背後の壁を切断し、外まで伸びていく。
正宗の肩は切断され、腕を氷付けにされ、その上背後の壁まで一直線の氷によって、繋ぎ止められていた。
「氷神竜一線は氷竜放った瞬間から一線に動き、触れた物を切断しながら、動き続ける。お前の肩は切断され、その箇所は氷付けにされ、更に壁までその氷は伸びている。身動きも出来ないお前は何ももう詰んでいる」
氷は体中から氷竜を無数に出現させる。
その無数の氷竜は身動きが封じられた正宗の体中にかぶり付く。
「氷神竜一線がどういったものなのかは理解出来ているだろう?お前の体中に食らいついた全ての氷竜が同時にそれをやったら、どうなるかは……説明はしねぇよ。その身で理解しろ!」
正宗に食らいついた氷竜達はその箇所を切断しながら、止まる事なく、氷の床、壁、天井を切断していた。
その事によって、正宗の体の至る所は切断された所が氷によって、繋ぎ止められ、更にその箇所は氷が伸びており、氷の床、壁、天井に繋がっていた。
「……お前にはもう何もすることは許されない」
「可笑しな話だ。こんな姿になっても、痛みも生じる事なく、会話を続けられるとは思わなかったよ」
「それこそが、暴滅氷神竜だ。氷が溶けた時、破壊された時、繋ぎ止められた箇所は切断される。元に戻すには、俺を倒すしかねぇが……誰も俺を倒せない事から、お前は一生そのままだ。嫌、お前らと言っておく。そこの鎧もお前と同じ姿になって貰うからなぁ」
氷は自身のその言葉通り倒れ込むデュークの元へと向かっていく。
「……氷神竜一線で、鎧の男を貫いて、剣士のあの男と氷を共有させるか」
氷は氷の床から氷竜を一体、出現させると倒れ込むデュークの首元を食らいつかせ、持ち上げる。
無防備なデュークの腹に、氷は氷竜を纏わせた右手を触れさせる。
「……氷神竜一線!」
氷の右手から放たれた氷竜はデュークの腹を切断させ、切断箇所を氷で繋ぎ止めると、止まる事なく、氷竜は真っ直ぐ正宗のからだへと向かっていく。氷は何度もそれを繰り返した。
「……氷神竜一線によって、お前たちの体は切断され、今は氷によって繋ぎ止められている。しかも、その氷は真っ直ぐお前たちの体と繋がっている」




