第580話 無限の氷神竜
氷で造られた二体の竜は素早く正宗を取り囲む。
二体の竜はその牙で尾で正宗へと襲いかかる。
そんな牙と尾を正宗は名殺神剣一つのみで対応して見せた。
「……剣のみで処理するなんて、すげぇなぁ!」
氷のその言葉と共に、氷で造られた二体の竜の動きの僅かな隙を正宗は見逃さなかった。
一瞬で移動した正宗は氷の目の前に現れる。
「早いなぁ」
「この一撃で終わらせる!」
正宗は手にしている名殺神剣を振るう。
しかし、その剣は氷に届く前に氷の床から出現した氷の竜が食らいついた事によって、止められていた。
「……まさか、俺が出せる氷竜が二体だけだと、思ったか?破壊不能は二体だが、俺が出せる氷竜の数に限りはねぇよ」
正宗は氷の床から出ている氷竜によって、口に加えられた名殺神剣を握る正宗はそれを振るい氷との距離を取る。
「……逃れられねぇよ!破壊不能の氷竜は俺の手元から離れても、移動が可能だ。それに加え、俺は自在に、複数の氷竜を出すことが出来るぞ」
「……みたいだね」
正宗は自身の攻撃を止められた事によって、氷のその言葉を直ぐに理解出来た。
暴滅氷神竜は触れたものを切断し、直ぐ様凍りつかせる事が出来る異能である。
生物を切断した場合、痛み、血が流れる事なく切断され、切断部分を繋げる様にして凍りつかせる事になる。そんな暴滅氷神竜によって、造られた氷竜の口によって、食らいつかれた筈の名殺神剣は切断される事なく、形を保たれていた事から氷は正宗が手にしている剣が破壊不能な剣であると推測する。
武器を造り出す神器はその神器によって、様々な効果をその体に付加させる事が出来る。そんな神器が破壊されれば、精神が保つ事が出来なくなる。
つまり、神器は破壊が可能である。しかし、正宗の剣は破壊出来ない事から、破壊出来ない為に氷は直接正宗の体を狙う事にした。
「……逃がさねぇよ。この氷の城からは誰も逃れられない」
氷のその言葉を証明するかの様に氷の床、壁、天井から氷の異能によって、氷竜が出現する。
「……見ての通りだ!今、出た氷竜は破壊出来るが、先に出していた二体の氷竜は破壊出来なねぇからな!……どれが、それなのかお前は理解しているのか?」
「必要ない。全て対処する!」
「……言ってくれるじゃねぇか。なら、見せてみろ!」
無数に出現している氷竜は正宗へと向かって移動を始める。
その中には破壊出来ない二体の氷竜も混じって居た。
そんな事は正宗も理解していた。しかし、背後にはデュークが居る事から、正宗は逃走することも出来ず、無限の氷竜を対処することしかデュークと自身の身を守る事が出来ない事から、正宗は全ての氷竜を対処することを決める。




