第579話氷(ひょう)の目的
「母親を閉じ込めている?」
「……下らん話は止めにする。これからは、ここからは戦場と化したこの場所で語り合おうか」
氷は自身の回りを蠢いている氷で造られた竜を同時に正宗、デュークの方へと、向かわせる。
「氷川家と言えば、切断力を誇る氷竜を扱う家系のはず。デューク、絶対に回避するんだ!」
「分かった。任せて!」
迫り来る氷で造られた竜の脅威を共有した事によって、二人が取る行動は防御することなく、回避となっていた。
氷で造られた竜のスピードは大した事は無いのだが、二人は大袈裟に避けていた。
「無駄だ!」
氷の発したその言葉通りに一体の氷の竜の胴体から、急激に造られた氷の竜は直ぐ様、デュークの左肩に食らいつく。
それと同時にデュークの肩は切断される。しかし、地面に落ちる事なく、氷付けにされていた。
「……肩から切り離し、氷で固定か」
「それだけでは無いよ。デュラハン・ブレイブと酷似している」
「本当かい?」
「間違い無いよ。デュラハン・ブレイブで首を切断された僕が言うんだ」
「……それじゃあ、痛みもなく、血も流さずにって事?」
「うん!」
二人のその会話に割り込む様に氷は入り込んでくる。
「暴滅氷神竜は触れた箇所を切断し、切断箇所を氷付けにする異能だ。って言っても、その氷は溶けるし、砕ける」
「それは可笑しな話だね」
「なにがだ?」
「君の出している二体の氷の竜は破壊不能の氷竜の筈だ!」
「そうだなぁ。だから、今もここに変わらずにあり続けるだろう?あいつの肩を氷付けにしている氷は別の氷と入れ替えられているんだよ。俺の意思とは関係無くなぁ」
「……デューク。下がって、後の事は任せて!」
デュークの今の状態から戦闘は難しいと判断した正宗はデュークの目の前に立ち、これ以上の戦闘を続けさせ無いように正宗は神器である名殺神剣を造り出すと、それを手にする。
「……変わってお前が俺の相手をするのか?」
「ええ。この名殺神剣がお相手します」
「それで俺の相手が務まるのか、疑問はあるが、まぁ良いや。紫音と殺る前にウォーミングアップはしないと行けねぇしなぁ。まさか、ウォーミングアップも出来ないなんて言うなよ」
「そこについては安心してくれて構わない。名殺神剣は切断を司る神器です。ウォーミングアップを終えても、この剣は貴女に襲いかかりますよ」
「期待はしねぇよ。俺の力はそんな神器で満足はしねぇからなぁ」
氷は自身の回りを蠢く氷で造れた竜を正宗の元へと向かわせる。




