第577話 氷川氷(ひかわひょう)
「ここに居ても仕方ない。上に行って見よう」
大広間に留まり続けた六三四達は上に繋がる階段へと向かい足を進ませる。
「……どうする?二手に別れるか?」
階段を昇り終えた楠木は道が別れている事から、これからの行動について六三四に相談を持ちかける。
判断を託された六三四は直ぐには決断することは出来ずに居た。
敵の戦力が未知数なこの状況で二手に別れる事が危険な事は言うまでもなく、六三四も理解している事だ。しかし、二手に別れたほうがこの氷の城の内部を捜索する為には効率が良いのも、事実である事も理解していた六三四は直ぐには答えを出す事は無かった。
「……二手に別れよう!」
悩み、考え付いた六三四が出した答えはそれだった。
四人で行動するよりも、二手に別れ、短時間で移動するほうが良いと判断した六三四はそれを実行した。
六三四の提案によって、六三四、楠木と正宗、デュークの二手に別れる事になった。
それから暫くたった後、正宗は名殺神剣を発動させ、それを手にする。
「……どうした?」
全身を赤い鎧で包んだデュークはデュラハン・ブレイブによって、顔を失っているが、鎧の中心に埋め込まれた巨大な魔法石によって、得た情報から正宗が能力による神器を出現させた事から、デュークは戸惑いながらも、尋ねる事にした。
「どうかした?」
「前方から何か来る!」
「何かって?」
「人間なのは間違いない。それも……姿が見えないのにも関わらず、殺意がここまで届く程の強者だ」
二人が警戒を続ける中、その男は二人の目の前に現れた。
「……チーム[クリムゾン]か……チーム[アブノーマル]はどこに居る?」
「目の前に居る者よりも、ここに居ない者を気にかけるのかい?」
「お前らに興味は無い。さっさと終わらせる!」
「チーム[ブリザード]はもう終わりの様だ。リーダーの君はここで終わってしまうのだから」
「……何をほざくのかと思えば、随分とふざけた事を言う。だが、それは叶わない。何故なら、お前らでは、俺には勝てねぇからな」
氷は自身の異能である暴滅氷神竜を発動させる。それによって、氷で造られた二体の竜が氷の床から出現する。
「……勝負にすら、ならねぇなぁ。俺とお前らの実力じゃあなぁ」
二体の氷の竜を自身の周りを這いずらせている氷のその表情には余裕すらある様にも伺える程に余裕綽々である。
「それでは、始めよう」
デュークは魔法陣からデュラハン・ブレイブを取り出す。
「……生物を簡単に切断させ、その後の活動に何の支障を与えない剣だったな」




