第574話 氷の城の中に
舞の攻撃によって、柚子は氷の城に衝突すると、氷の城を破壊して氷の内部へと吹き飛ばされていた。
「柚子様!」
焦る男のその声は舞と氷月の耳に届く。
その男は吹き飛ばされた柚子の元へと向かっていく。
柚子の倒した達成感を感じられる事なく、呆気に取られている舞に氷月はため息を漏らすと
「私の出番は無かったわね」
皮肉とも取れるその言葉によって、舞は我に返り、慌てて氷月に食い付く。
「えっと、まだ敵も居るし、活躍の機会は幾らでもあるよ」
「……どうでも良い。そんなに戦い訳でも無いし」
「そうなの?」
「そんな事よりも、どうするの?城の中に行くの?行かないの?」
「……どうしよう?」
「好きにしたら。私は行くつもりだけど」
氷の城の中に入るか、判断に戸惑っていた舞だったが、氷月の答えを知り、決断する。
「私も行くよ」
「俺達も行こう」
舞のその言葉に同調する様にして、男は声を発する。
舞がその声の主の方へと目を向けると、四人の姿を捕らえる。
その四人の内声を発した男はチーム[ブレイド]のリーダーである九十九六三四であった。そんな六三四の隣に立つチーム[ブレイド]の副リーダーである楠木村正は氷の城を暫く見つめると、確認を取る。
「氷の城を破壊されており、戦闘の痕跡は見られるが、俺達はここに来て、間もない。状況を説明してくれないか?」
「……今まで戦っていて、対戦相手を氷の城の方に吹き飛ばしたんだけど……」
「なるほど、つまりはその相手の生存は確認出来ていないって事だな?」
「生存って……殺してないよ」
「そうか。ならば、気絶と認識して貰おうか」
「……多分、気絶していると思う」
「……ならば、氷の城の内部には気絶していると思われる人間があることは確実って事だな?」
「私が気絶させた女の子を追いけた男の人が居たよ」
「気絶している女と男が一人か、まぁ、警戒はしておくか」
楠木のその発言を受け、六三四は聳え立つ氷の壁に手を置く。
「城に入る前に確認をしたい事がある」
「……えっと、何?」
「この氷の壁の向こうには誰か居るのか?」
「三人居ると思う。三人と戦っていた男の人は城の中に向かったから」
「……その男を追いかけなかった時点でその戦いは終わっている可能性があるな。まぁ、確認をしておくか」
六三四は手に触れていた氷の壁を自身の能力である一刀両断を発動して、縦に切断すると、直ぐに、横にも切断を加える。
「……後は頼む」
「全く、分かったよ」
楠木は冥府邪剣を発動させ、それを手にすると、その刀身から放たれる黒いオーラを切断された氷の塊に包み込ませる。




