第572話 深紅の緋桜(クリムゾン・スカーレット)
紅桜から黒いオーラは消え、淡紅色に変化したその刀身は今までとは何の変化も無いものの、刀身から溢れ出す紅色のオーラは留まる事は無かった。
「……深紅の緋桜。これが、私に出来る最高の覚醒」
「確かに、今までとは随分と違うみたいね。その剣を手にしている限り、その力は貴女に付加される。でも、それは私も同じ、お互いに剣を握る限り、効果は違うけど、特殊な効果を得る。私は聖神としての効果を……貴女の紅桜にはどんな効果があるのかしら?」
「……身体能力の向上と、五感の強化だけだよ」
「そう。私の剣と貴女の剣どちらが上なのか、決めましょうか」
「うん!」
舞は手にしている剣を強く握り締め、剣から溢れ出す紅色のオーラを刀身に纏わせ、構える。
(……この構えは……さっきの回転する技。黒いオーラから紅色のオーラに変化しているけど、全く同じものみたいね。)
舞の様子から先程と同じ技が繰り出される事を把握した柚子はオリジナルの氷の剣を構え、舞の技が繰り出されるその瞬間を待っていた。
「紅桜:不知火型:桜吹雪」
深紅の緋桜を振るうと同時に大量の桜の花びらが回転しながら、柚子の元へと向かって飛んでいく。
柚子は先程と同じ様に、オリジナルの氷の剣から冷気を放ち、飛んでくる大量の桜の花びらを凍らせていく。さっきまでの一撃なら、これで対処出来ていたが、今回はそうはいかなかった。
何個かは凍りついたものの、大半は柚子の元まで接近していた。
柚子はそんな花びらの対処に追われる事になる。柚子はオリジナルの氷の剣で向かって来る花びらを切り裂いていた。
深紅の緋桜の刀身から止まる事なく、大量の桜の花びらが放出を続けていた。
柚子はいつ終わるか分からない、その攻撃の対処に体力が奪われ続けていた。そんな柚子の脳裏にある出来事が甦る。
そうそれは現在の柚子の背後にある氷の城で起きたはなしである。
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「二つ聞いても良いかしら?」
初めて、この氷の城に訪れた柚子はチーム[ブリザード]のリーダーである氷川氷に疑問をぶつけていた。
そんな柚子の疑問は柚子の護衛を務めていた佐倉湊斗も耳を立てて聞いていた。何故なら、湊斗も幾つかの疑問があり、もしかしたら、柚子が聞こうとしている内容と類似している可能性があるからだ。
「なんだ?」
「まず一つ。チーム[ブリザード]を結成するのは、構わないわ。でも、何故私が副リーダーなのかしら?」
「適任だと判断したからだ」
「強さで言えば、私よりも、湊斗の方が強いわ」




