第57話 神の義手(ゴッド・ハンド)
私はパジャマを脱ぎ捨て、服を着る。
母が誕生日に買ってくれた白と黒のドレスを着る。
「もう、終わったかな?」
私は上を見上げる。そろそろ父は力尽きた頃だろうな。
父を手にかけたけど、罪悪感もなければ、達成感もない。
あるのは無だ。
「……騒がしいな」
サイレンの音だ。部屋全体が赤色の光に包まれる。
警察か?
私は父の様子を見に行く。
「死んだか……」
影が形を作り手となり未だに父の首を絞めている。
止めても良いが止める理由も無い。
ドーン
下から大きな物音が聞こえた。
警察が乗り込んで来たのか?
一体何故?
父が電話したのか?
父のポケットからスマホを取り出す。
……どうやら、父が電話した様だ。
何の為だろう?
母を殺し、私を殺し、父も死ぬつもりだったのかな?
私は窓を開ける。
母は美しい人だった。
けど……
これだけは嫌いだった。
「お母さん力を貸して」
私はペガサスのぬいぐるみに対して能力を発動される。
ぬいぐるみは姿を変える。
悪魔の手に変貌する。私は悪魔の手を背中から生やす。
翼の様になった手を羽ばたかせる。
変な感じだ。空を飛ぶのは
私は家の屋根の上に立つ。
「何あれ」
「翼か?」
「悪魔だ?」
「殺したんじゃ無いのか?」
何で野次馬達が知っている。
まさか?
……父を誘導したのは……
「動くな」
警察の人間は銃を持ちながら告げた。
腕は震えており、弱々しく見えた。
私が力を手に入れたからか?
でも、もう良いや。
この町全部が私の……嫌、私達の敵だよね。お母さん。
私は悪魔の手を羽ばたかせ空を飛ぶ。
私の母が悪魔属性の能力ってだけで殺すって言うなら、私はお前たちを殺す。
「お前たちに見せてやる。この神の義手を」
「貴様、降りてこい」
警察官がうるさい。
先ずはこいつから。
私は両隣の家に対して能力を発動させる。
両隣の家はゆっくりと形を変える。
「これは……」
警察官が驚くの声を上げる。
家具、コンクリート等家にあった全てが手として機能する。
「お前からだ」
両隣の家から作った手で警察官を挟み殺した。
「何があった?」
「分からない」
私のお母さん死んだって言うのに面白半分の野次馬どもが次はお前たちだ。
両隣の家で造った手には潰れた警察官が居る。さあ、お前たち私と同じ絶望を感じろ。私は重なった手を動かし、片手で警察官を掴ませる。
そして、野次馬達に警察官の死体を投げつける。
私の神の義手は生物以外を手に変える事が出来る能力。
私はこの町を破壊する。
野次馬達を逃がさない。アスファルトから手を造りだし野次馬、警察官全ての人間の足首を掴ませる。
もう、この汚れた町は要らない。
この町全ての家を手に変える。