第568話 違和感
氷月は違和感を抱きながらも、氷神月下を発動させ、柚子を操ろうと試みる。
しかし、その瞬間、足元の氷は柚子の異能である氷神の聖剣によって、造られた氷の剣が突き刺さる。
その氷の剣が氷月の氷に触れた瞬間に切断させる。
「残念ね。貴女の能力は私には効かないみたいね」
「それはどうかしら?」
「強がりは止めたら。私は氷神月下の能力を熟知しているわ。つまり、対処法も理解しているのよ。この意味、分かるかしら?」
「それがどうした?」
「……言葉で説明するよりも、力で示すとしますよ」
柚子は氷月との会話を断念し、氷の剣を強く握り走り出す。
迫り来る柚子をなんとか、止めようとする氷月は柚子が通るだろう箇所を凍り付かせる。
しかし、柚子はその箇所に一切触れる事も無く、迫っていた。
氷月は自身の周りの凍りついた地面の上に自身の氷を出現させる。
これ以上、動けば氷月の氷へと触れるその手前で柚子は立ち止まる。
「……これでは、もう進めないわね」
冷静に氷月の攻撃を対処する柚子のその落ち着きとは違い、柚子への怒りと能力を連続で使用した事によって、氷月は息を切らしながらも、柚子の行動をしっかりと見つめていた。
「一つだけ、教えておくわ。氷神の聖剣は氷の剣を造る異能では無いわ。私の周りに浮遊している氷の剣は私の周りに留まる事しか出来ないと思った?」
「……」
「理解は出来ている様ね。この氷の剣は私の手元を離れていても、操作出来るのよ」
柚子は自身の言葉を証明するようにして、自身の周りに浮遊していた氷の剣を自在に動かし、氷月の元へと飛ばしていく。浮遊していた十個の氷の剣は氷月の元へ飛んでいくが、簡単に氷月は避けてしまう。
しかし、柚子としては、全く問題の無い事だった。
氷月が避けた十個の氷の剣は氷月が造り出した周りの氷を切断しながら、柚子の元へと戻っていく。
「これで、貴女の氷神月下は発動出来ない。それとも、同じ規模の氷をまた造れるのかしら?」
柚子のその挑発を受け、氷月は再び同じ規模の氷を造り出す事も出来るが、それをすることは無かった。何故なら、また氷を造り出しても、簡単に切断されては、能力の無駄使いになることは分かりきっている事だった。
普通にやっても、勝てないと考えに至った氷月は工夫をしなければいけないと考えていた。
「……私も戦うよ」
氷月のその様子を察した舞は剣を握りしめながら、告げる。
その提案は氷月にとっては、有難いものだった。
「…… 一瞬で良いから、あの女の動きを止めて」




