第562話 逃れられない一撃
大量の水を頭上に広げ、防御体勢を整えた湊斗は落ち続ける亮太の一撃を待つ事にした。竜の鱗を大量に右手に集中させたその巨大な竜の手と化したそれは、湊斗の頭上に広がった水に接触する。
「……鎮静の水に接触したら、最後動けないですよ」
湊斗のその言葉通り、水に接触した巨大な竜の手を伝って、亮太の体の自由を奪った。しかし、その巨大な竜の手は大きさに比例して、重さもあるため、亮太の意思とは関係無く、湊斗へと落ちていく。
巨大な竜の手の下敷きになった湊斗は地面と巨大な竜の手に挟まれる。
しかし、湊斗には大したダメージにはなっていない。それは、氷雪魔神によって、全身を氷に覆われている為である。氷雪魔神によって、魔神と同等の体を持つ湊斗にとって、亮太の一撃を避けようが、受けようが、大した事にはならない。
だからこそ、湊斗は巨大な竜の手を簡単に吹き飛ばし、そこから脱する。
巨大な竜の手ごと、吹き飛ばされた亮太は鎮静の水によって、体の機能の殆どを停止せれた上に、幻覚によって、身動きの取れないまま、地面に横たわる。
「……今回はこの程度だった事から偵察部隊だろう。次は……こんなに簡単には行かない。だと言うのに、氷川氷は何を考えている?これ以上、柚子様を危険に晒す訳には行かない」
戦いの終わりに湊斗はこの事態を招いたチーム[ブリザード]のリーダーの氷川氷への違和感を感じながら、氷に隔てられた向こう側に居る柚子への心配を募らせていた。そんな湊斗の足は自然と柚子の元へと向かっていた。




