第559話 氷の悪魔vs竜神
現在。湊斗は過去の出来事を思い返しながら、あの時に氷と出会ってなければ、と思いながら目の前に居る亮太との戦いに本腰を入れる。
「……この勝負。すぐに終わらせる」
氷雪魔神の能力によって、全身を氷に包まれた湊斗は大量の水を亮太に向け、放出させる。
その水は生き物の活動を停止させる事が出来る鎮静の水であると同時に幻覚を連続して相手にかけ続ける水である。それは、優菜が倒れた時点で亮太もただの水では無いことを認識しているため、亮太はその水を目にすると共に翼をはためかせ、上空へと飛び立つ。
上空へ飛び、湊斗の攻撃を回避した亮太だったが、亮太が空へと飛び立つのは湊斗も理解していた事だった。
だからこそ、湊斗は次の攻撃をする際に上空へとする事は攻撃をする前から考えていた事だった。
湊斗は氷雪魔神の能力向上前の能力である氷神雪剣を握る右手を振るう。それと同時に大漁の雪が空から降り注ぐ。
(……氷神雪剣と能力向上後の氷雪魔神の二つの能力は厄介だな。氷雪魔神は72柱の悪魔シリーズの一体で佐倉湊斗には間接的な攻撃……幻覚や坂口の完全模倣みたいな他人に依存する様な能力、異能は効かない時点であいつには接近戦でやるしかねぇな)
湊斗との戦いかたを決めた亮太は翼をはためかせ、湊斗の居る地上へと移動を始める。
しかし、大量の雪が降り注ぐ中、上手く飛べない亮太は安定しないまま、飛行を続ける。そんな亮太の動きは制限されていることもあって、湊斗からしたら、簡単に読み取れるものだった。
だが、湊斗は行動をする様子は無く、右手に持つ氷神雪剣を握り締め、タイミングを伺っていた。
亮太が湊斗へ接近すると共に、湊斗は右手に握る氷神雪剣を振るう。その瞬間、大量の水を放出させる。
接近していた亮太が避けられる訳も無く、大量の水をもろに食らってしまう。
「……これで、終わりだ。鎮静の水によって、体の自由は奪われ、永遠に幻覚が襲うこの水の中では、もう何も出来ないよ」
大量の水を操作して、水の球体の中に亮太を閉じ込めた湊斗は戦いの終わりを確信すると、亮太を水の球体の中に閉じ込めたまま、氷に隔てられた向こう側に居る柚子の元へと向かおう動き出す。
「……行かせない」
体の水分を奪われた厚美は氷に覆われた地面を這いつくばりながら、湊斗を止めようと動こうとするものの、異能の発動もせずにただ声を出しただけ厚美に対して、湊斗が出来るのは関わらない事位だ。
厚美の声だけの静止を促すその言葉に従う事なく、湊斗は柚子の元へと足を進める。
 




