第557話 上原凍結(うえはらとうけつ)
「だから、なんですか?」
「上原家来るか、佐倉家に戻るか、ここで俺に捕らわれるか選べ!」
「私達はここから逃れる。それ以外の答えは無い!」
「……残念だ!」
「上原凍結。氷川家と上原家の血を受け継ぐ貴方は本来、佐倉家の人間の筈
、何故上原家にこだわる?」
湊斗のその突然のその問いかけに、凍結は暫く考え込むと、答えを出す。
「俺は氷雪様に付いていく……それだけだ」
「……上原家は何を考えている?」
「お前では、考え付かない事だ!」
「……考え付かない事?氷系統の家系を取り込もうとしているのが、絡んでいるのでは?」
「答える必要は無い」
「それは、つまり認めると?」
「……好きに解釈しろ。だが、お前らは、連れていく」
凍結は全身から冷気を漂わせる。
「……柚子様。逃げるご準備を」
「ええ、上原凍結と正面からやっても勝てないもの」
湊斗のその提案に柚子は何の躊躇いもなく、賛同し、逃走を準備を始める。
「……逃がさんぞ」
凍結は全身から漂わせていた冷気を地面、建物等に触れさせていく。
冷気に触れた物は瞬時に凍り付くと、それから様々な種類の花が咲き誇る。
「湊斗、もう逃げるわ」
「はい」
二人は凍結の異能が冷気に触れた物を凍らせ、エネルギーや魔法、能力、異能を吸収し、花を咲き誇らせる異能であり、冷気が届いた瞬間、凍らせる事が可能な為、簡単な対処法としては逃走位である。その事実があるからこそ、何の迷いも無く、逃走を開始する。
背を堂々と晒しながら、逃げるふたりを追いかける様にして、地面や外壁に凍りついていた、氷は二人を追っていく。凍結の異能によって、冷気の触れたものの全て凍らせるまで氷は出現を続ける。限度があるものの、逃げる二人を捕らえるまで出し続けても、問題は無い程に氷を出し続ける事は可能だ。
「……柚子様。迫り来る氷の勢いは予想よりも速いです。私の能力で食い止めます」
「……時間の無駄。そんな事をするよりも足を動かしなさい」
「しかし、このままでは」
「……分かってる」
逃げ続ける二人の前に水色の髪の少年が立ち塞がる。
二人は左右に別れ、少年を避け、走り続ける。
「貴方も逃げなさい。死ぬわよ」
走り続ける柚子は微動だにしない少年に告げる。
少年はその言葉を聞き取る事も理解もしていたが、聞き入れる事はなかった。少年は右手を迫り来る氷に向けると、氷の竜を出現させると、迫り来る氷に衝突させる。氷に氷の竜がぶつかると迫っていた氷を一瞬にして、切断する。切断された事によって、真ん中の氷は消滅したものの、左右には凍結の氷が存在していた。氷の竜が通り道には少年の氷が新たに造られていく。




