第554話 氷雪魔神(クロセル)
亮太の竜の鱗を見て、湊斗はその竜の鱗の強化が気になっていた。
その強化によって、攻撃の仕方や、攻撃回数が変化するからだ。
先ずは、その強化を確かめる為、氷神雪剣の能力によって、造られた所々に雪の結晶が散りばめられた刀身の剣である神器を持つ湊斗は振りかざし、氷の塊を亮太に向け、放出させる。
亮太は迫り来る氷を回避するため、飛行をして回避する。
その氷は止まる事なく、亮太の背後に居た優菜のものへと迫っていた。
(……後ろに少女が居ることを理解した上での、回避とすると、少女一人でこの私の攻撃の破壊、回避する術があるとの確信からの行動かな?)
優菜を置いて、飛行して回避した亮太と、迫り来る氷から避けようともしない優菜の様子から、湊斗は優菜が氷を対処する術があるのでは無いかと言う考えに至る。
そんな湊斗の考え通り、優菜は迫り来る氷を見つめ、完全模倣を発動させるそれによって、迫り来る氷と全く同じ量、大きさのまま、同じスピードで迫り来る氷と衝突させる事に成功する。
衝突した氷同士はそのまま動く子となく、動きを止める。
全てを見ていた湊斗は自身と全く同等の氷を造り出した事から優菜のその力を見極める。
(……コピー系の能力、異能か)
湊斗の出した氷と全く同じ氷を出した事からコピー系統の能力、異能である事を見抜いた湊斗だったが、その表情は優れていなかった。
それはコピー系統と言っても、様々なものがあり優菜がどんなコピー系統の能力、異能に属するかまではこの一瞬では見抜けなかった事から、湊斗は優菜への警戒を怠る事なく、頭上に居る亮太へ目を向ける。
「飛行を続けるか……」
空を飛ぶ術を持たない湊斗は氷神雪剣によって、水、氷、雪を飛ばす、降らせる事は可能だが、それだけでは亮太を倒すには至らない事は目に見えている事から、それは止める。
そんな湊斗は己の覚悟を吐露する。
「私が氷神雪剣を能力向上を使うのは私の覚悟と柚子様の忠誠の為、その為には負ける事は出来ないのです」
湊斗が右手に握る氷神雪剣から溢れ出す黒いオーラを全身に纏う。黒いオーラを全身に纏った湊斗の全身は凍り付き、悪魔の姿へと変化する。
「……神器の能力の能力向上が全身に及んでいるのか?」
上空に居る亮太は湊斗の能力向上の様子から通常の能力向上とは異なる事を見極める。
それは地上に居る優菜も同様だった。
「……神器の強化ではなく、自身の体?」
戸惑う二人に対して、体中を氷に纏わせ完全なる姿となった湊斗は妙な冷静さのまま、立ち尽くしていた。
「……もう勝負にはなりませんよ。氷雪魔神と化した私には」




