第552話 異能と能力
氷付けにされた湊斗は氷神雪剣を発動させると、氷を一瞬にして消し去る。
「……やっぱり、無理か」
凍らせる事に成功した厚美だったが、湊斗の能力から無駄であることは分かりきっていた。氷を消し去った湊斗は右手に持つ氷神雪剣の剣を厚美に向ける。
「私は凍りついても、対処出来ますが、貴女は出来ない……この事実は理解していますか?」
「……それはやってから言いなさい」
「では、行きますよ」
湊斗は左手を厚美へと向ける。
左手を厚美の体に合わせる事によって、照準を合わせた湊斗は厚美の全身を凍りつかせる。しかし、凍りついて、直ぐに湊斗によって、氷付けにされた厚美は氷の魔水晶を発動させ、内側から湊斗の氷を破壊する。
「……異能力者は幾つもの覚醒を得て、数種類の異能を扱うものですからね。氷の魔水晶の覚醒である氷神魔水剣を手にしていても、氷の魔水晶を同時に扱えるとは厄介ですね」
「確かに、どっちか一つなら、対処出来たかしら?」
「問題ありませんよ。私には」
「貴方は能力者でしょ。能力の進化は能力自体の進化である能力向上か異能へと変化する覚醒だけど、能力が覚醒した場合、異能力者とは違いどっちか一つしか扱えない。同時に使えるのは能力向上のみ。異能力者とは違い能力向上は元の能力と能力向上後の二つ同時のみ。世界には十個の覚醒を同時に扱う異能力者も居るのよ」
「それは貴女では無い筈!」
「そうね。二つ扱える私に貴方はどうするのかしら?」
「私の能力、氷神雪剣は能力向上が可能ですよ」
「そうね。では貴方も二つ同時に扱えるのね」
「ですが、貴女相手に使うつもりは無いですよ。この力は柚子様を守る為と、私の誇りと覚悟を守り抜く時のみ扱うと決めているので」
「そう。構わないわ。私は私の出来る事をするまでよ」
厚美は右手に握る氷神魔水剣を強く握り締めると、一気に湊斗の元へと走り込む。
迫り来る厚美に対して、湊斗は氷柱を無数に飛ばしていく。
そんな氷柱に対して、厚美は避ける事はせずに、走りながら、剣を振りかざし、全て対処する。
氷柱を剣で凪ぎ払った事によって、少しだけだが、隙の出来た厚美の体の全ての間接を凍りつかせる。
その一瞬の隙に湊斗は厚美の正面まで移動する事に成功する。
厚美は自身の間接に凍りついている氷を自身の氷を内部から出現させ、破壊することに成功する。自由の身となった厚美だったが、その時には、湊斗の右手に持つ剣は厚美に迫っていた。
厚美は凍りついている地面を利用して、足をわざと滑らせる。




