第547話 佐倉湊斗(さくらみなと)
日本五大剣客に入れる程の実力だと、理解した優菜は思わず後退りで後退していく。そんな優菜と違い堂々と舞絵に出ていく、亮太は厚美の真横に立つ。
「……さっきまで、病院に居た者を戦わせはしないわ」
「リハビリ位はさせて貰わないとここまで、来た意味がない」
「……坂口優菜を連れてくる為だけに、貴方も連れ出したの。今の貴女はそれぐらいの価値って事!」
「だとしたら、その目は節穴だなぁ」
「……これでも、日本五大剣客を務めていた過去を持つ女よ」
「過去だろ?今は今だ。今の話をしろよ!」
「……その今、現在怪我人の貴方に戦わせられないと言っているの」
「じゃあ、どうする?」
「私がやるわ。私が殺れれば、貴方がやるしかないけど」
「それまで、大人しく見てろって事か?」
「ええ」
納得は出来ていなかったものの、亮太は後退し、戦いを厚美に譲る様に、して距離を取る。
自身の目の前を塞ぐようにして、立つ厚美とその背後に居る優菜と亮太の様子から、戦いに臨むのは厚美だけだと、判断した湊斗は思わずため息を溢す。
「まさか、私の相手が一人だけとは」
「不服かしら?」
「……いえ、構わないですよ。ここで全員やりますので。順序が変わるだけで、殲滅とすることには変わりありませんから」
「随分と強気ね」
「この場を制圧して、柚子様の元へ向かわせて貰います」
「それは出来ないことね」
「……では、早速行かせて貰いますよ」
湊斗は能力である氷神雪剣を発動させ、所々に雪の結晶が散りばめられた水色の刀身の剣を握りしめる。
氷神雪剣は水、氷、雪属性の全てが扱え、それを体現させたのが、湊斗の握る剣であり、その剣を出さなくても、体中から水、氷、雪属性の攻撃手段があるにも関わらず、湊斗は剣を手に取った。
剣に握りしめている湊斗はその剣を軽く横に振る。
その瞬間、天候がガラリと変化し、みぞれが降り注ぐ。
「……まさか、天候まで操るなんて、驚きね」
降り注ぐみぞれを肌に感じながら、厚美は目の前に居る湊斗を称賛する。
「思っても無いことを口に出すものではありませんよ。全く、驚いた様には見えませんから」
「……バレた?」
厚美のその間の抜けた返答に湊斗は深く息を吸い込む。
「……一瞬で終わらせて貰いますよ」
湊斗はそのを勢い良く振るう。厚美は勿論、その後ろに居る亮太、優菜にその剣や斬撃が届く事は無かったが、変わりに大量の雪が大量に降り注ぐ。
それは分断された隣側には一切、影響は無かったが、厚美達の居る場所には、多大な影響を及ぼす。雪は十メートル以上が積もり、湊斗の周辺以外は埋もれた状態となった。




