第542話 青と蒼
「……終わらせる?」
「色々有りすぎた。俺の人生はなぁ」
「……死を覚悟したなら、最後位やる気になって貰おう。と言っても殺さないが」
「強くはなったが、昔とは変わらない部分もあるようだな」
「俺の何が変わらない?」
「その甘さだ。俺の左手の事もなぁ。全身を凍らせる事が出来るなら、さっさとやるべきだ」
「それは俺の勝手だ」
「そうだな。もう何も言うことは何も無い。……お前の言う通り、お前に氷の扱い方を教えた者として、最後はそれなりの実力を示そう」
「……来いよ!」
茂人は氷の蒼玉を発動させ、碧人の周囲から濃い青色の氷を無数に出現させる。このまま、行けば、無数の氷によって、碧人の体は押し潰される事は確実だ。
碧人は全身から青い雷を放ち、正確に茂人が出現させた青い氷へと当てる。
青い雷が接触したその瞬間に、ダイヤモンドと同等の氷が凍りつく。
「……俺の氷を氷で阻止か。面白い!」
右手を失い、左手が使えないその状況にも関わらず、茂人は楽しそうに、戦いを続ける。そんな茂人の様子を見て、首を傾げる五十嵐に仁は
「どうかした?」
と一言だけを問いかける。
「随分と楽しそうだな」
「……あいつが決めた最後の戦いだからな」
「そうか。チーム[ドミネーション]に加担した事によって、地下送りになるだろうしな」
「地下に送られたら、どうなるかは分かるだろう?」
「当たり前だ。俺も居たんだからな。生命エネルギーの吸収は勿論、上原茂人なら能力のエネルギーも吸収されるだろう」
「……そのエネルギーによって、日本のエネルギー問題は解決されているからなぁ。犯罪者にも感謝だな」
「しかし、上原茂人も気づいているだろ?」
「勝てない、事実にか?」
「あぁ、上原の青き閃光の氷剛石があれば、単簡に対処出来る」
「上原茂人も気づいているさ。それでも、最後に刻みたいのだろう……己の弟子に伝えられる事を」
「……だと良いが」
二人の会話していることは碧人も茂人も理解していたが、それについては一切触れる事なく、戦いを続行していた。
しかし、茂人の氷の蒼玉は碧人の青き閃光の氷剛石の氷によって、動き、大きさが出来ないように、上に覆い被さる様にして、出現させられている為、何も出来ない状況が続いていた。
「ダイヤモンド並みの強度の氷の破壊は俺には出来ないな。内部の強度もしっかりと戻っているな」
「……それで、もう終わりか?」
「……あぁ、俺の氷では、お前の氷の強度を撃ち破る事は出来ないからな。だが、一つだけ言っておきたいことがある」




