第541話 青き閃光の氷剛石(ブルー・スパーク・ダイヤ)
「……やっぱりな。氷の魔神に奪われたから俺は覚醒が出来なかったんだ。でも、今は違う。この力、留まる事を知らない」
碧人の全身から溢れる黒いオーラは青い雷へと変化していく。
「……氷の金剛石はダイヤモンド並の氷を造り出す異能の筈……だよな?」
青い雷を全身から放つ碧人を見て、戸惑いながら、五十嵐は隣に居る仁へと確認を取る。
「……覚醒はその者の思いに応じて変化する。能力からの覚醒で異能力に変化するのとは違い、異能力の覚醒は思いによって幾つも、変化する。あいつの覚醒は自身の思いが純粋に表に出た姿だろ」
「純粋な姿が雷なのか?」
「……雷が単純に強いと理解しているからな。上原家と手を組んだ橘家の者と何度も、戦っているからな。聞いた話では、橘吉凶や橘強絶とも戦った事があると言っていたな」
東京本部でも優秀な実力者の一族を相手にしていたその事実に五十嵐は驚きを隠せずに居た。
「……良く、無事だったな」
「ダイヤモンドは電気を通さないからな。まぁ、防御だけして、やり過ごしていた様だがなぁ。そんなあいつが攻撃力を得るための答えが雷だ」
青い雷を全身から放出を続けている碧人はそれを止める様子は無く、右手を失った茂人を見つめていた。
「……もう終わりだ!」
「……言ってくれるな」
碧人は全身から放たれる青い雷を右手に集中させる。
激しいその青い雷は白い火花を散ち、その火花は無数のダイヤモンドを散りばめていた。
「……その青い雷はダイヤモンドなのか?」
「どうだろうな?」
碧人は右手に集中させていた青い雷は茂人の左手へと向けて、放つ。
左手に直撃した茂人は左手の異変を感じ取る。
「……俺の左手はもう使い物にならんな。左手の内部は全て、ダイヤモンドを詰め込んだのだろ?」
「……正確には氷の金剛石だ。俺の覚醒、青き閃光の氷剛石のベースは氷の金剛石そのものだが、雷属性を得た事によって、雷に触れた場所なら、どこでも凍らせる事が出来る」
「……それもダイヤモンドの強度の氷か……なら、この左手には血液が流れる事はないな」
「……あぁ、間違いなく、壊死するだろうな」
「俺の体を雷で貫通させ、凍らせる事は左手でしか出来ないなんて事は無いだろう?」
「……あぁ、いつでも、全身を凍らせる事が出来る」
「体の内部を凍らせる事が出来るとは、成長したな」
茂人のその言葉を聞き入れた碧人は無言のまま、右手に青い雷を纏わせる。
「……色々あったこの人生……終わらせてくれるか?」




