第534話 氷の魔水晶(アイス・クリスタル)
「……取り敢えず、これ以上は氷の鋼鉄剣の刀身を奪われる訳にはいかないわね」
鏡から伸びる刀身を伝って、氷の魔水晶の氷を出現させ、鏡を凍らせる。
その氷によって、自身の手まで凍りつくと判断した茂人は氷の魔鏡を手放した。
「……強度のあのこの氷を破壊するには時間がかかるな」
「そんな時間は与えないわ。貴方はもう、氷の魔鏡を扱えない」
「それはお互い様だろ?あんたも氷の鋼鉄剣を使えない状況だと言う事を忘れたのか?」
「……それは少し違うわ」
厚美が氷の鋼鉄剣を強く握ると、氷の鋼鉄剣の失った刀身から吸収されていた氷の魔水晶が失った刀身として、出現する。
「残念だったわね。氷の鋼鉄剣は氷を吸収出来れば、刀身のサイズや、大きさを自在に変化させる事が出来るのよ。例え、氷の魔鏡に刀身が移動していても、氷の鋼鉄剣の性質上対処出来るのよ」
「……それは確かに厄介だ」
氷の鋼鉄剣のその力を見て、茂人は一瞬にして、距離を取る。そんな茂人の右足が一瞬にして凍りつく。それを確認した茂人はその氷が厚美では無く、その弟の碧人が造り出した氷だと理解する。
その氷が簡単には壊せない事が分かっていた茂人は全身の力を抜く。
「やっぱり、来たのね。碧人」
「……一応、あの人には教えて貰った恩があるからな」
「恩なんて感じているのかしら?」
「一応って言っただろ?」
「それでどうするの?」
「……全身を凍らせる!」
「確かに、碧人の氷の金剛石の強度なら、それも簡単に出来るでしょうね」
「だったら」
「ええ、任せるわ。まぁ、失敗したら、氷の鋼鉄剣で切り捨てるけどね」
「残念だが、今回はそれを使う必要はない。氷の鋼鉄剣で遊びたいなら、日本五大剣客での任務でやれ。その剣の真の力の解放はー」
「分かってる。それに私の力では無理よ。いずれは、貴方がものにしないとね」
「……今、そんな事を言われても困る。取り敢えず、拘束する」
「任せるわ」
厚美の許可が降りた事によって、碧人は躊躇する事なく、行動を開始する。
身動きが取れない茂人を氷の金剛石で凍らせようと、碧人は行動した。
その瞬間、茂人は懐から氷の魔神を差し向ける。
異能を発動させている碧人は気にも止めずに、発動させる。
「待って、碧人!」
厚美のその制止が間に合う事なく、氷の金剛石は発動される。
異能を発動した碧人は全身から力が抜け、倒れ込む。
そんな碧人とは対称的に茂人は右足の氷も無くなり、自由の身となっていた。
「……氷の魔神を持っていて、助かった」




