第533話 石原厚美
氷の鋼鉄剣に握った厚美は氷に覆われた地面へと突き刺す。
それと同時に地面を覆っていた氷と、壁や天井に覆われた氷まで吸い込まれる様にして、氷の鋼鉄剣へと入り込んでいく。
「……はやり、氷の鋼鉄剣がある限り、氷の主導権は持っていかれるみたいだな」
「……これで貴方の氷の蒼玉は全て、吸収出来る。さらに」
厚美は氷の鋼鉄剣を茂人へ向け、突き出す。
それによって、吸収されていた氷の蒼玉が一瞬にして、放出される。
「……氷の鋼鉄剣を奪わないと、勝負にならないな」
自身の氷を吸収され、吸収した氷を自在に扱える氷の鋼鉄剣のその存在がある限り、勝負にならないと判断した茂人は厚美から氷の鋼鉄剣を奪う事を決める。
そんな茂人は迫り来る氷の鋼鉄剣から放たれたその氷を自身の能力である氷の蒼玉によって造り出された氷の壁によって防ぐ。
「氷の鋼鉄剣が全ての氷を吸収して、放ち、その氷の特色に合わせた剣になると言っても、無敵な訳ではない」
「そうね。その通りよ。それが何?」
「……その弱点をつくだけだ」
「出来ないわ。何故なら、私の氷の魔水晶と氷の鋼鉄剣の相性はとても良いのよ」
厚美が握る氷の鋼鉄剣の刀身は水色から白い色へと変化していく。その白い色は紛れもなく、氷の魔水晶の氷を取り込んだ証拠だった。
「見ての通り、氷の鋼鉄剣は私の異能を取り込んだわ。この意味が分かるかしら?」
「分かっているさ。だからこそ、それが欲しい」
「貴方には一生手に入らないものよ」
「手に入るさ。目の前にあるんだからな」
「意味の分からない事を」
「……石原家の当主の娘と言っても、氷の魔鏡の全てを理解している訳では無いようだな」
「何が言いたいの?」
ポケットから氷の魔鏡を取り出す。
そんな氷の魔鏡を手にした茂人は厚美にその鏡を見せつける。
「……全ての氷に写ったものを見るだけがこの鏡の能力ではねぇよ。説明するよりも、見せたほうが良いな」
氷の魔鏡の鏡に手を入れ込んだ茂人は不適な笑みを浮かべると、氷の魔鏡から手を抜くとその手には氷の鋼鉄剣の刀身を掴んでいた。
しかし、掴むと言っても手を切らない様にして持たれたその持ち方では、厚美との引っ張り合いには勝てないだろう。
だが、茂人のその強気な表情は崩れる事なく、掴まれたその手を放す。
それを離れた距離に居た厚美は鏡から刀身を抜こうとしたが、何の変化も起きなかった。
厚美は確認するように、氷の鋼鉄剣を見つめる。
刀身の半分は消えており、その半分は鏡から伸びていた。




