第531話 石原家の過去
これは石原碧人の幼少期から現在までの物語。
「……また、失敗したようだな」
「だって、難しいよ」
「確かに他の一族と違って、石原家の氷は強度が命と言われてきた一族だからな。まぁ、その強度のせいで扱いは難しいがな」
「どうやったら、上手くなる?」
「集中することだ」
「集中?」
「俺達、石原家の氷は強度がある分、範囲が狭くなる。しかし、お前は範囲が広く、氷が分散している。一点に氷を圧縮してみろ」
「分かった。やってみるよ……出来た。見てよ師匠!」
まだ幼い碧人がその喜びを教えてくれた男へと伝えようと振り返ったその瞬間、その男は姿を消す。
「碧人、何をしているの?」
「姉ちゃん。師匠に氷の扱い方を学んでいんだよ」
「師匠?」
「うん。確か……石原茂人って言う人だよ」
「そう。もう関わらないで」
「どうして?」
「一族の異端者だからよ」
「なにそれ?」
「……石原家は代々、異能力者だけの一族だけど、あの男は能力者として産まれてきたの」
「それだけで、異端者ってなるの?」
「……今までとは違うそれだけで、そうやって区別したがるのよ」
「可笑しいよ。師匠は皆が教えてくれない事を教えてくれるもん」
「一族の掟は他の一族と比べると、可笑しく、信じられないものばかりよ。石原家は異能力者のみの人間で暮らしてきたの。そこに現れた異能力者はいつか災いが起こるなんて、陰で皆言っているわ」
「師匠は悪い人じゃあない」
「……そうね。石原家は頭の固い人ばかりだからね。いつか、分かりあえる日が来ると良いわね」
「来るよ。絶対!」
「……兎に角、余り関わらないで」
「……うん」
碧人はそれ以上の事はする事なく、姉の厚美の後へと続いて、歩いていく。
そんな碧人には一つだけ疑問を抱いていた。
能力者と異能力者違いはなんなのかと。
そんな疑問を尋ねられる人物を碧人は一人しか知らなかった。
「ねぇ、師匠」
「なんだ?」
「能力者と異能力者の違いって分かる?」
「……それを聞くってことは、俺がこの石原家の立場を知ったみたいだな」
「……うん。聞いたよ」
「そうか。簡単な話だ。能力は固定であり、異能力は思いの力で変化するものだ」
「それって、どっちが強いの?」
「能力はどんな状態でも、一定の力を放ち、異能力は思いの力によって、変動を続けるものだ。強さで言えば、異能力が強いと言えるだろう。だが、思いの力をどこまで引き出せるかによるがな」
「思いの力ってどんな思いなの?」
「人それぞれだ。お前もその内分かる異能力者なんだからな」
 




