第528話 氷の暴走と錬成術
氷で出来た津波を消滅させた二人の前に、氷花が現れる。
「また、偽物ですか?」
正宗のその問いに氷花は無言のまま、全身から氷を溢れ出させる。
そんな氷を見て、楠木は冥府邪剣を振るう。
「……こんな脆い氷では何も出来んぞ」
「……今回は別みたいですね。脆さは否定しませんが、氷は止まる事なく、出現を続けています」
「……本体も覚悟を決めたか。己の全てを賭け、全てを氷にして、攻撃している事から、ここで決めるつもりだな」
氷花の全身から出てくる氷を何度も、切断を繰り返す楠木、正宗の二人は終わりの見えない作業の連続を繰り返していた。
そんな二人の疲労を感じ取ったデュークは両手に魔力を集中させる。
その凄まじい魔力量に気づいた楠木、正宗は動揺する。
「何をしてやがる。そんな魔力を使ったら、転移魔法が使えなくなるだろうが」
「……逃げるにして、大事な仲間が死んだら意味を成さない。僕は守られるだけの存在では無い。これこそが、ここで唯一僕だけが、出来る事」
「……何が出来る?」
「……白魔術:錬金術ー」
「……そんな事をしても無駄だ。連続して、出てくる氷を対処出来ない」
「……人の話を最後まで聞いて貰おう。僕がするのは白呪術錬成術だ」
「お前ごときが出来る訳無いだろう」
「勝手に決めないで貰おう。これだけは誰にも譲れない。これだけは誰にも負けない」
デュークの両手に集まった魔力は白いオーラは白い蛇の様な姿へと変化していく。
そんなデュークの錬成術に背に感じながら、楠木、正宗は氷の切断を続けていた。
そんな最中、デュークの両手から白い蛇の様なそれは氷へと向かい、移動を開始する。白い蛇の様なそれが氷に触れると氷は水へと変化すると、白い蛇の様なものは氷花の体へとかぶりつく。
その瞬間、氷から水を出していた氷花の体からは何も出る事は無かった。
それを確認すると、正宗は名殺神剣を消す。
「良いのか?」
「はい。デュークによって、終わったのは確実ですよ」
「俺はまだ信用した訳では無い!」
「貴方はそうかもしれませんね」
「お前は違うと」
「はい。同じチーム[クリムゾン]の仲間ですから」
「……そうか。あいつは信用せんが、お前の言葉なら信じても良い」
楠木は冥府邪剣を消す。
「……彼女の体の仕組みを錬成術によって、少し変えました」
「変えた?」
「はい。少しの間、寝てもらいます」
「そうか。少し、本当に少しだけ助かった」
「それでどうするのですか?九十九六三四の元には行かないのですか?」
「行くわけねぇだろ。あいつは負けねえ」




